萩原朔美のスマホ散歩
散歩は、街を一冊の本のように読むことだ。だから、スマホでの撮影は、読書感想を忘れないための、メモ書きみたいなものなのだ。この「スマホ散歩」を読んでくれた人が、それぞれの街を読書し始めたらとても嬉しい。何か楽しい風景に出会えることを願っている。
第3回 2020年8月7日
凄い、と思って撮影してしまう。ところが、写真を見ていて何故凄いと感じたのか分からなくなる。家を覆い尽くした蔦の生命力?
蔦が家を食い尽くしたホラーのような恐怖?
蔦とも家とも分からなくなるよう面白さ?
結局、主役が蔦で、家が背景に隠れている状態の不安定感が、撮影したくなる原因かと、思う。
家であり、蔦である。
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長を務める。