高田稔、千葉早智子、伊達里子らが本人役で登場する本作では、P.C.L.管弦楽団が実際にステージ内で演奏しながら、トーキー撮影を行う模様が再現されている。この時期、台詞だけでなく、BGMも同時録音されていたことが判る貴重な映像資料である。
続篇の『がっちり時代』では、第3から第5までのステージ外観や、正門からロケバスが出発する様子も見られる。両作の製作主任を黒澤明が務めていることにも注目で、のちに黒澤は、自身の時代劇『虎の尾を踏む男達』(45年撮影)でエノケンをコメディリリーフとして起用することになる。
続くは、満映(満州映画協会)製作による『東遊記』(40年)という映画。本作では、満州の地から本土で働く友人を訪ねてきた凸凹コンビの農民が、映画のロケ現場(女優は原節子!)に遭遇。ひょんなことから俳優になった二人が「昭和キネマ」の撮影所を訪れると、そこは紛うことなき「東宝撮影所」! ここでは、正門を入った二人組が第1ステージへと向かうシーンが確認できる。満映の人気スター・李香蘭(山口淑子)が顔を見せているのも嬉しい。