24.02.28 update

第10回 小林武史、三上博史、山口智子、種田陽平……映画『スワロウテイル』のすばらしき仲間たち。そして僕はフジテレビを離れる覚悟ができた

 そんな状況の中、また救世主は小林武史さんだ。
 主題歌「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」(Yen Town Band)のメロディーを彼の事務所で初めてキーボードで弾いてくれた時の感激は今でも覚えている。映画の中でCHARAが歌う曲、そして何より劇伴が素晴らしい。
 それでも、やや難しいテーマの映画で、音楽がヒットするかは公開直前までわからなかった。
 映画の完成が公開直前になる中、主題歌は7月に発売した。連続ドラマの主題歌なら、1話目の放送後の発売が多かったが、2か月前に発売してランキングが下がっていくと公開時のアシストにはならなくなってしまう。しかもYen Town Bandとは何者か? 覆面バンド!?

 小林武史氏は、オリコン初登場は30位とか50位もしれないが(その通りに)、徐々に上がっていくのでは? と預言者のようなことを言う。演歌じゃあるまいし……と疑心暗鬼の中、公開2週間前に、しっかりオリコン1位になり、「~あいのうた~」が『スワロウテイル』の主題歌であることが認知され一気に若者が映画館に詰めかけてくれた。10億円の興収を超えたヒットになった。

 海外にも多く招待され、モスクワ国際映画祭のコンペティション部門にも岩井俊二監督と二人で行った。

 主題歌CDとYen Town BandのCDアルバムは其々、オリコン1位を獲得し100万枚前後の大ヒットになった。僕にも、レコード会社(Epiソニー)も予測できないセールスになった。ポニーキャニオンから発売されたビデオもヒットした。

 その後、美術監督の種田陽平さん氏は『キル・ビル』(2003/クエンティン・タランティーノ監督)など、現在は世界で活躍。助監督だった行定勲さんは『GO』(2001)、『世界の中心で愛をさけぶ』(2004)等、ヒット監督になった。アソシエイトプロデューサーの久保田修さんは『ジョゼと虎と魚たち』(2003)を作り、その後良作を連発、同じく前田浩子さんは『百万円と苦虫女』(2008)等を製作。関わったスタッフは、この映画がきっかけとなり羽ばたいた人も多い。これは嬉しいことだ。

 また、宣伝などでWOWOWが番組などを制作してくれ、公開後は映画の放映も行なった。

 ただ、未だにフジテレビでは放映していない。どんなにヒットしても、やはり視聴率は10%を上回る事はないと思う。フジテレビのその判断は正しかったと言える。

▲1996年、映画『スワロウテイル』の製作により藤本賞・特別賞を受賞した筆者。本人いわく、予想外の受賞だったと。藤本賞とは、生涯を映画製作に捧げ277本の作品を世に送り出した映画プロデューサー・藤本真澄(ふじもと さねずみ)の功績を讃え、東宝によって設立された賞で、著しい活躍をした映画製作者を表彰するものである。現在、映画製作者を表彰する唯一の賞である。ちなみに藤本は東宝映画初代社長でもあった。本年の特別賞は、『PERFECT DAYS』の製作に対し、柳井康治、役所広司、ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬の各氏が受賞している。

かわい しんや
1981年慶應義塾大学法学部卒業後、フジテレビジョンに入社。『南極物語』で製作デスク。『チ・ン・ピ・ラ』などで製作補。1987年、『私をスキーに連れてって』でプロデューサーデビューし、ホイチョイムービー3部作をプロデュースする。1987年12月に邦画と洋画を交互に公開する劇場「シネスイッチ銀座」を設立する。『木村家の人びと』(1988)をスタートに7本の邦画の製作と『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)などの単館ヒット作を送り出す。また、自らの入院体験談を映画化した『病院へ行こう』(1990)『病は気から〜病院へ行こう2』(1992)を製作。岩井俊二監督の長編デビュー映画『Love Letter』(1995)から『スワロウテイル』(1996)などをプロデュースする。『リング』『らせん』(1998)などのメジャー作品から、カンヌ国際映画祭コンペティション監督賞を受賞したエドワード・ヤン監督の『ヤンヤン 夏の想い出』(2000)、短編プロジェクトの『Jam Films』(2002)シリーズをはじめ、数多くの映画を手がける。他に、ベルリン映画祭カリガリ賞・国際批評家連盟賞を受賞した『愛のむきだし』(2009)、ドキュメンタリー映画『SOUL RED 松田優作』(2009)、などがある。2002年より「函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞」の審査員。2012年「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」長編部門審査委員長、2018年より「AIYFF アジア国際青少年映画祭」(韓国・中国・日本)の審査員、芸術監督などを務めている。また、武蔵野美術大学造形構想学部映像学科で客員教授を務めている。

1 2 3 4 5

映画は死なず

新着記事

  • 2024.05.22
    今こそ〈肉体の理性〉よ! ─萩原 朔美   

    第15回 キジュからの現場報告

  • 2024.05.20
    やっぱり懐かしい!映画『男はつらいよ』の世界にひた...

    京成電車下町さんぽ<2>

  • 2024.05.17
    町田市立国際版画美術館「幻想のフラヌール―版画家た...

    応募〆切:6月10日(月)

  • 2024.05.14
    阿木燿子作詞、宇崎竜童作曲の名曲を得て、自身初とな...

    ミュージシャンという肩書が似合うようになった

  • 2024.05.14
    全米の映画賞を席巻した話題作『ホールドオーバーズ ...

    応募〆切:6月5日(水)

  • 2024.05.14
    『あぶない刑事』の舘ひろし&柴田恭兵、70歳超コン...

    5月24日(金)公開

  • 2024.05.10
    背中トントン懐かしい ─萩原 朔美   

    第14回 キジュからの現場報告

  • 2024.05.10
    練馬区立美術館「三島喜美代─未来への記憶」展 観賞...

    応募〆切:5月31日(金)

  • 2024.05.10
    <特集>帰ってきた日本文化の粋 ─ 今、時代劇が熱...

    文=米谷紳之介

  • 2024.05.09
    吉田修一原作×大森立嗣監督が『湖の女たち』で再びタ...

    5月17日(金)全国公開

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

information »

ロマンスカーミュージアムが3周年記念イベントを開催!

イベント ロマンスカーミュージアムが3周年記念イベ...

4月10日(水)~5月27日(日)

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!