人生百年時代――とはいえ、老いさらばえて100歳を迎えたくはない。
健康で生気みなぎるような日々を過ごせてこそ、ナイス・エイジングだ!
西洋医学だけでなく東洋医学、ホメオパシー、代替医療まで、
人間を丸ごととらえるホリスティック医学でガン治療を諦めない医師、
帯津良一の養生訓は、「こころの深奥に〝ときめき〟あれ」と説く。
帯津良一・85歳のときめき健康法
文=帯津良一
当時の都立小石川高校は至って自由な気風。何をしても、何をしなくても叱られるということはなかった。その上に大の団体行動嫌い。運動会とか文化祭は大嫌いだった。そんなことで、高校三年の秋、運動会の予行演習をサボって、友人と二人で映画を観に行ったのである。
場所は池袋駅東口にある映画街。映画は『風と共に去りぬ』。監督ヴィクター・フレミング、主演はクラーク・ゲーブルとヴィヴィアン・リー。上映時間はおよそ四時間。1930年代につくられた映画史上に輝く傑作である。
十分に堪能して興奮して出て来たところを補導の刑事さんにつかまったのである。
歩道の柳の木の下で、二人並んで、こんこんとお説教されたあと、
「ところで、大学は何処を受けるのかね」
「……東大です」
途端に刑事さん、急にやさしくなったと思ったら、
「帰ってよし!」
と来たものである。
どういう風の吹きまわしだったのか、いまだによくわからないが、とにかく高校時代、1951年からの三年間は、まさに映画少年。太平洋戦争中の空白を埋めるべく、怒濤の如く押し寄せる洋画群に翻弄されていた。
スクリーンの中の
我がヰタ・セクスアリス
その映画少年の発端は中学時代。川越市内の映画館で、もっぱら石坂洋次郎原作の青春ものに酔い痴れていた。まずは『青い山脈』。1949年。今井正監督。演ずるは原節子、竜崎一郎、木暮実千代、池部良、伊豆肇、若山セツ子、島崎雪子、杉葉子という豪華メンバー。西条八十作詞、服部良一作曲の主題歌とともに希望に燃える胸の内が今でも静かに蘇って来る。
そして『山のかなたに』。1950年。千葉泰樹監督。主演は池部良、角梨枝子。この角梨枝子さんに初めてセックスの対象としての女を感じたのだ。まさに生まれて始めてだ。何回か観に行って、切符売り場の小母さんに叱られたものである。
そして高校時代はもっぱら池袋東口。なかでも思い出深いのは少し離れた処にあった「人世坐」だ。ここで真っ先に思い出すのは『哀愁』。原題名は「Waterloo Bridge」。監督はマーヴィン・ルロイ。主演はヴィヴィアン・リーとロバート・テイラー。ロンドンのウォータールー橋を舞台に繰り広げられる悲恋物語である。
1996年、スピリチュアル・ヒーリングの研修のため初めてロンドンを訪れたとき、ヴィヴィアン・リーのような女性に逢うこととウォータールー橋をこの足で歩いてみることをひそかに願っていたが叶えられなかった。ロンドンの女性は顔の大きい大女ばかり。ウォータールー橋は改装されていて映画とは似ても似つかないものになっていた。昔の橋はアメリカの富豪が買ったと仄聞している。
おびつ りょういち
1936年埼玉県川越市生まれ。東京大学医学部卒業、医学博士。東京大学医学部第三外科に入局し、その後、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立。そして2004年には、池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設現在に至る。日本ホリスティック医学協会名誉会長、日本ホメオパシー医学会理事長著書も「代替療法はなぜ効くのか?」「健康問答」「ホリスティック養生訓」など多数あり。その数は100冊を超える。現在も全国で講演活動を行っている。講演スケジュールなどは、https://www.obitsusankei.or.jp/をご覧ください。