23.10.12 update

西城秀樹の“ブーメラン”ファンも泣いた、出棺とともに流れた「ブルースカイ ブルー」

 その悲しい知らせを目にしたのはNHKのニュースだったと思う。2018年5月16日午後11時53分、急性心不全のため横浜市内の病院で西城秀樹が帰らぬ人となった。一瞬狐につままれたような気がした。脳梗塞を発症したが、多少会話に不自由があるもののテレビで歌う姿を見たのが昨日のことのようだった。
 忘れていた元気な頃の西城秀樹(以下ヒデキ)が走馬灯のように蘇ってきた。
 野口五郎、郷ひろみとともに新御三家と言われ、小、中学生の頃テレビで見かけない日はなかった。よく3人の中で誰が好きかと話題になったが、私はどちらかと言うと〝ひろみ派〟だった。エネルギッシュで、体の底から絶唱するヒデキはテレビの画面からはみ出してしまいそうなくらい熱く、とても遠い存在だった。
 しかし、今になってヒデキが特別なスターだったことがよくわかる。彼の遺したものは大きかった。今では珍しくないが、スタジアムでのコンサートを最初に開催したのはヒデキだった。日本武道館でソロ歌手として初めてのライブ、富士山麓での野外コンサートや、ペンライトを振るファンと一体になったコンサート。ゴンドラの宙づりなど、ヒデキのステージは斬新だった。香港や韓国などアジアへの進出も早かった。1987年には中国にも進出、北京では2万人収容の会場が4回満員になったという。

 訃報から10日後の5月26日、青山葬儀所で行われた告別式の模様がテレビでも映された。野口五郎と郷ひろみの弔辞、多くの芸能人のコメントもあったが、胸を打たれたのは沿道を埋め尽くすファンの姿だった。多くは喪服を纏い「ヒデキ!」「ヒデキ!」と連呼する。その姿に思わずもらい泣きしてしまったのだ。


 出棺の時流れていたのが「ブルースカイ ブルー」だった。「ブルースカイ ブルー」は、1978年8月25日リリースの26枚目のシングルだ。作詞・阿久悠、作曲&編曲・馬飼野康二による。私が唯一買ったヒデキのドーナツ盤だった。秋の空を見上げるとこの曲を思い出していた。当時ヒデキは23歳。それまでの激しいアクションのボーカルスタイルとは異にしたバラード曲で、ゆったりと穏やかに歌い上げるヒデキの歌声はどこまでも優しく包まれるようだった。道ならぬ恋に走った若者の愛と別れを歌ったのだが、後ろめたいイメージは全くない。オーケストラをバックに、ヒデキの歌唱力があったからこそ、爽やかに壮大な世界を作り上げることができたのだろう。愛する女性と秘めた暗闇の世界に閉じこもっていた若者が、それぞれの道を歩むことに決めた日の空は眩しいほど青かった。そんな情景が目に浮かぶ。

1 2

映画は死なず

新着記事

  • 2024.05.24
    吉永小百合とのコンビによる純愛路線映画『泥だらけの...

    日活青春スターとして忘れられない存在

  • 2024.05.24
    バブル期からの拝金主義で「他人を思いやることの大切...

    6月14日(金)全国公開

  • 2024.05.23
    イギリス新作映画初登場でナンバーワンの大ヒット!ま...

    6月7日(金)全国公開

  • 2024.05.23
    ホキ美術館「作家の視線─ 過去と現在、そして…」観...

    応募〆切:6月30日(日)

  • 2024.05.23
    明治期の数少ない近代洋風建築の「フェリーチェガーデ...

    6月1日(土)リニューアルオープン

  • 2024.05.23
    パッパッパヤッパーのスキャットが忘れられない、大人...

    フィンガーアクションで大ヒット

  • 2024.05.22
    今こそ〈肉体の理性〉よ! ─萩原 朔美   

    第15回 キジュからの現場報告

  • 2024.05.20
    やっぱり懐かしい!映画『男はつらいよ』の世界にひた...

    京成電車下町さんぽ<2>

  • 2024.05.17
    町田市立国際版画美術館「幻想のフラヌール―版画家た...

    応募〆切:6月10日(月)

  • 2024.05.14
    阿木燿子作詞、宇崎竜童作曲の名曲を得て、自身初とな...

    ミュージシャンという肩書が似合うようになった

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

information »

new 明治期の数少ない近代洋風建築の「フェリーチェガーデン日比谷」が6月1日(土)リニューアルオープン

明治期の数少ない近代洋風建築の「フェリー...

6月1日(土)リニューアルオープン

ロマンスカーミュージアムが3周年記念イベントを開催!

イベント ロマンスカーミュージアムが3周年記念イベ...

4月10日(水)~5月27日(日)

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!