23.12.14 update

アイドル・桜田淳子を大人の歌手に飛躍させた、中島みゆき作詞・作曲の「しあわせ芝居」

シリーズ わが昭和歌謡はドーナツ盤

 毎年この時期に気になるのは、中島みゆきの「夜会」である。コンサートでも、演劇でも、ミュージカルでもない「夜会」は、1989年に始まり、中島による原作、脚本、作曲、演出、主演で年々評判になっていった。チケットはなかなか入手困難で、また取れなかったと残念な思いになるのだが、今年は12月8日から『中島みゆき 劇場版 夜会の軌跡 1989~2002』がロードショーされることを知った。これは逃してはならないと、上映の始まった映画館に出かけたのである。

 音響がよいと評判の有楽町の映画館では、「二隻の舟」から、「ふたりは」「キツネ狩りの歌~わかれうた~ひとり上手」と続き、「まつりばやし」「街路樹」「氷脈」「記憶」と冬のイメージで終わった。全19曲、なかには初めて聴く曲もあったが、19曲ともかなり凝った衣装と演出がされていて、エンターテイナー・中島みゆきの独創性に驚かされる連続だった。「わかれうた」では、和服姿で道に倒れ、髪をふり乱しながら情念たっぷりに歌い上げていたが、あまりの熱演に笑いを誘った。「夜会」は彼女のライフワークとされ、通算20回も公演をしているが、本来のシンガーソングライターとしても600を優に超える楽曲がある。

 今も歌い継がれる名曲「時代」(75)をはじめ、「NHKのプロジェクトX~挑戦者たち」の主題歌「地上の星/ヘッドライト・テールライト」やNHK連続テレビ小説「マッサン」の主題歌の「麦の唄」など、スケールの大きな曲も多いが、当初は〝失恋ソングの中島みゆき〟のイメージが強かった。自身の「アザミ嬢のララバイ」「わかれうた」「悪女」、研ナオコに提供した「LA-LA-LA」「あばよ」のヒット曲など、フラれて傷ついた女心を歌った曲が浮かんでくる。


 そんな中島が1970年代、トップアイドルだった桜田淳子に提供したのが1977年11月5日リリースの「しあわせ芝居」だ。中島みゆきは、25歳、歌う桜田淳子は19歳である。男性の本心に気付いてしまった女性の辛い心情を、19歳の桜田はよく表現したと改めて思う。筆者にとってこの歌が心に響いてきたのは、ずっと後のことである。

1 2

映画は死なず

新着記事

  • 2024.07.22
    昭和39年、純愛ドラマの先駆けとなった東芝日曜劇場...

    純愛ドラマ「愛と死をみつめて」のミコ役でトップ・スターに躍り出る

  • 2024.07.18
    ちあきなおみ版が複数のCMに起用されスタンダード・...

    永六輔と中村八大の「六・八コンビ」による〝黒い〟シリーズ第2弾

  • 2024.07.17
    老いが追いかけてくる ─萩原 朔美の日々   

    第19回 キジュからの現場報告

  • 2024.07.17
    [ロマンスカーミュージアム]の夏休みイベントは親子...

    7月17日(水)から

  • 2024.07.17
    <自然災害から身を守るPart2> 大型台風、暴風...

    大型台風、暴風の季節に備えて

  • 2024.07.16
    世界中の映画祭を席巻した、メキシコの新鋭監督の『夏...

    応募〆切:8月4日(日)

  • 2024.07.16
    山梨県立文学館開館35周年の特設展は「文学はおいし...

    7月13日(土)~8月25日(日)

  • 2024.07.11
    約2000株のアジサイが見ごろを迎える箱根・強羅の...

    箱根・強羅の散策に

  • 2024.07.11
    世界的ヒット曲「アイ ライク ショパン」をユーミン...

    ユーミンの「麻美ちゃんに歌わせたい」という天才的な閃き

  • 2024.07.10
    東京で唯一の大名家の美術館「永青文庫」で家紋をテー...

    7月27日(土)~9月23日(月・振)

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!