140万枚という大ヒットを残したが続くシングル「25時」「九月の色」、「オレンジ・エアメール・スペシャル」「レンズ・アイ」「ねがい」「愛の時代」「お友達」「ピアニッシモで…」の8枚、オリジナルアルバム7枚をリリースしたが、残念ながら「異邦人」には及ばなかった。85年に音楽家の久米大作(俳優・久米明の次男)と結婚し芸能界を引退した。その後も音楽への思いは強かったようだ。自身の音楽の原点を探る中、たどりついたのは幼いころ教会で聴いた讃美歌だった。そして現在、音楽宣教師として音・言葉・絵画を組み合わせた新しいスタイルのチャペルコンサートを行い、カルチャースクールで聖書講座を担当する。好きな音楽を自身のスタイルで続け、魅力的な歳の重ね方をしているようである。
「異邦人」は、中森明菜や徳永英明など多くのアーティストにカバーされ不朽の名曲として音楽ファンに愛されている。名曲とは多くの人に歌い継がれて行くものだろう。
当時はヒットの裏側も、久保田早紀自身のことも知らなかったが、私にとっては暗いトンネルの中に灯された〝ともしび〟だった。そして今でも忘れられない曲である。
文=黒澤百々子
参考「ふたりの異邦人 久保田早紀*久米小百合 自伝」著:久米小百合