22.12.16 update

ユーミン、半世紀の音楽旅

             

 ユーミンは友達との共通の話題になっていた。ユーミンは時代を語り、聴けばその当時を思い出すが、今から思えば、私たちはユーミンで時代を意識し、時代という地に足をつけていたのかもしれない。

 歌詞を引用して話をする人もいたが、私は往々にして歌詞を覚えない。まず曲が入ってくる。

 人間の身体の中には、旋律があるような気がしている。それは自分では歌えないのだが、聞いてすぐに覚えてしまう曲がそれなのではないか。そして、ユーミンはまさにそれ。だから歌詞はうろおぼえなのかもしれない。

 それでも、車に乗っていてトンネルに入ると、きまって「オレンヂのトンネルの中は横顔がネガのようだわ」というフレーズを思い出した。ほんとうにそうだとあらためて感動し、そのままユーミンの世界へ、車は星空へと走っていく。

 ─── ということは歌詞も覚えているんじゃないか。そういえば合宿の夜、ひとつの部屋に集まってカラオケをしたとき、隣の女子に、一緒に「あの日にかえりたい」を歌おうよとさそわれた。私が、その歌、知らないと言ったので、友達は一人で歌い始めたが、すぐにこれが「あの日にかえりたい」だったのかと思い、一緒に口ずさんでいた。

 ユーミンは詞と曲が不可分で、その歌詞にはその曲しかなく、またその曲にはその歌詞しかないのかもしれない。こうしてみると、ユーミンの替え歌は聞いたことがない。

▲2枚目のアルバム『MISSLIM』には、「生まれた街で」「瞳を閉じて」「やさしさに包まれたなら」「海を見ていた午後」「12月の雨」「あなただけのもの」「魔法の鏡」「たぶんあなたはむかえに来ない」「私のフランソワーズ」「旅立つ秋」が収録されている。「やさしさに包まれたなら」は、1989年、映画『魔女の宅急便』のエンディングテーマになった。「海を見ていた午後」に出てくる「ドルフィン」は、横浜・山手にある実在のレストランで多くのファンが訪れる。「12月の雨」は4枚目のシングル。ジャケット写真はイタリアンレストラン「キャンティ」のオーナー所有のグランドピアノ前で撮影された。フジテレビ『おそく起きた朝は……』の初期のオープニングテーマにも使われていた。『MISSLIM』のアルバムには、バックコーラスに山下達郎、大貫妙子、吉田美奈子も参加していた。▼

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