ユーミンは友達との共通の話題になっていた。ユーミンは時代を語り、聴けばその当時を思い出すが、今から思えば、私たちはユーミンで時代を意識し、時代という地に足をつけていたのかもしれない。
歌詞を引用して話をする人もいたが、私は往々にして歌詞を覚えない。まず曲が入ってくる。
人間の身体の中には、旋律があるような気がしている。それは自分では歌えないのだが、聞いてすぐに覚えてしまう曲がそれなのではないか。そして、ユーミンはまさにそれ。だから歌詞はうろおぼえなのかもしれない。
それでも、車に乗っていてトンネルに入ると、きまって「オレンヂのトンネルの中は横顔がネガのようだわ」というフレーズを思い出した。ほんとうにそうだとあらためて感動し、そのままユーミンの世界へ、車は星空へと走っていく。
─── ということは歌詞も覚えているんじゃないか。そういえば合宿の夜、ひとつの部屋に集まってカラオケをしたとき、隣の女子に、一緒に「あの日にかえりたい」を歌おうよとさそわれた。私が、その歌、知らないと言ったので、友達は一人で歌い始めたが、すぐにこれが「あの日にかえりたい」だったのかと思い、一緒に口ずさんでいた。
ユーミンは詞と曲が不可分で、その歌詞にはその曲しかなく、またその曲にはその歌詞しかないのかもしれない。こうしてみると、ユーミンの替え歌は聞いたことがない。