文・写真=上田尚也 東京都稲城市
ふるさとの鳥取にはまだ昭和の時代そのままの不動産屋がある。
写真はおろか間取り図のない手書きの短冊が今でも残っているのは、もしかしたら日本広しといえどもここだけじゃないだろうか。
それにしても、昔は部屋を探すときに間取りはあまり気にしていなかったのだろうかと、簡素な説明だけの短冊を見てふと疑問に思った。
映画「男はつらいよ」第9作で貸間ありの札に腹を立てた寅さんが部屋探しをするシーンで、寅さん流の条件はあっても間取りなんて気にしていない様子だった。
「寝られりゃいいんだから」と。結局、佐山俊二扮する不動産屋から紹介されたのがとらやの二階だったというオチには何度見ても笑ってしまうのだが、部屋探しも時代の移ろいとともに変わっていくんだなと思った。
アパートの名前だって、メゾンだのシャトーだの横文字ばかりが並び、荘がつくアパートはもう昭和の名残となってしまった。