文&写真 遠藤遊馬(神奈川県横浜市)
東京池袋、西口繁華街に古色蒼然とたたずむロサ会館に、シネマ・ロサがある。このビル、1968年(昭和43年)に建てられた我ら不良少年のメッカだった。ボウリング場あり、ゲームセンターあり、酒場あり。同じ昭和43年に創業したカウンター9席だけの洋食店には、今でも行列ができる。ここから徒歩10数分の、豊島区要町に住み青春時代を過ごしたボクには、絶好の遊び場だった。
シネマ・ロサ、悶々としてピンク映画を観に行った記憶があるし、ハリウッド時代劇トム・クルーズの『ラスト・サムライ』はここで観た。メジャー封切りあり、ピンクあり、インディーズあり。50余年を経た、まさしく「日本の映画館」なのだ。このたび訪れたのは、同時代の恋愛映画の名作にして大ヒットしたイタリア映画『ひまわり』(1970年)を上映しているから。
プーチン侵略戦争下、ウクライナで撮影されたという見渡す限りに広がった一面のひまわり畑が再上映につながったのだとか。あらためて大スクリーンで観るひまわりに、ウクライナの悲惨な戦火の街の現実はつながらないが、戦争によって引き裂かれる人間の悲しみはヒシヒシと伝わる。ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニの競演もさることながら、ヘンリー・マンシーニのテーマ曲は、50年を経た今でも涙をさそった。昭和の遺物のようなビル、昭和の映画館、昭和の名作、おまけにこの日は昭和の日だった。