ジェーン(ジュリア・ガーナ―)は、映画プロデューサーになるという夢を抱いていた。名門大学を卒業し、競争が激しい狭き門だった有名なエンターテインメント企業に就職できた。仕事は、業界でも大物として知られる会長のもとでジュニア・アシスタント。夜明け前に誰よりも早く出社し誰よりも遅く帰る日々がもう二か月になる。毎日の仕事は平凡な事務作業とお茶くみ。会長には暴言を吐かれ、気まぐれな要求を突き付けられる。しかし、今は下働きでもいつかやって来るチャンスを待つしかない、会社にしがみついてキャリアを積んでゆくしかない…。
失望と希望の相克はジェーンを寡黙にするが、そんな状況下で、新しいアシスタントの研修を任される。その若い新入社員は業界も未経験で、仕事に向かう意識も低い。にもかかわらず、会社は高級ホテルに泊まらせている。会長への違和感は不信感に変わり、性的搾取者であるという事実に直面する。このハラスメントを黙認していていいのか? 同僚の誰にも打ち明けられない苛立たしさから、意を決して人事部の長に直訴する。だが本来企業内の調停役を務める彼と話をしているうちに、これは単に会長という権力者一人の問題ではなく、はるかに大きな病巣が組織に中に潜んでいることを知るのだ…。
2017年に急速にアメリカで拡大した#MeToo運動。性暴力とハラスメントの被害経験者はハッシュタグ〈#MeToo〉をつけてオンライン上に投稿。これまで被害に遭っても沈黙せざるを得なかった人々の間に連帯を生み出す以上に、性暴力に対する社会全体の認識の甘さと加害者が簡単に罪から逃れる実態を明らかにするキャンペーンとなった。女性を中心にした運動ではあるが、性差を超え多くの人々が沈黙を破ることに繋がった。さらに、ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン事件を暴いた二人の女性記者の闘い──映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022)は、#MeToo運動をいよいよ本格化させた。
「THE ASSISTANT」の監督キティ・グリーンは「ジョンベネ殺害事件の謎」(2017)で知られるドキュメンタリー映画作家で、大学キャンパスにおけるセクハラの複雑さを探るドキュメンタリーを制作中だった。そこに起きた〈#MeToo〉運動、そしてハーヴェイ・ワインスタイン事件も重なって、映画業界そのものの悪しき慣習、性差別、女性搾取に目を向け本作の題材となっていったという。
配給:サンリスフィルム
6月16日(金)新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラスト有楽町 ほか全国順次公開
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