南米ペルーからニューヨークに移住してきた家族の物語、『ニューヨーク・オールド・アパートメント』が2024年1月12日(金)より新宿シネマカリテ他で全国公開となる。
ペルーはマチュ・ピチュや古代インカ帝国の遺跡もあり世界中から多くの観光客が訪れる。2023年は日本とペルーの外交樹立150周年にあたり、秋篠宮佳子さまも公式訪問されるなど日本にとっても親しみのある国だ。
ニューヨークの古いアパートでひっそりと暮らす母親と双子の兄弟は、安定した暮らしを求めペルーから移住してきたが、不法滞在者である。見つかれば強制送還されてしまうことを恐れながら暮らしている日々だ。母親はウエイトレスをしながら年頃の息子たちを育て、息子たちもフード配達で家計を助けながら英語学校に通っている。
そんな生活に疲れていた母親だったが、レストランの客で自称小説家を気取る白人男性から愛を囁かれ世界が変わる。しかし、そのうちに強かな男の口車に乗せられ、一緒にメキシコ料理のデリバリーサービスを自宅アパートで開業することに。面白くないのは息子たちだ。母親との溝が生まれてしまう。同じころ、息子たちも語学学校で知り合ったクロアチア出身の美しくミステリアスな女性に心を奪われ、虜になる。彼女は純朴な二人には手に負えない暗い秘密を抱えていた。親子3人がそれぞれ恋に落ち、一条の光に照らされたようだったが、3人はトラブルに巻き込まれ、母と息子たちは離れ離れに。果たして、母子3人は再会することができるのだろうか……。
本作のマーク・ウィルキンス監督は、スイス出身で、本作が長編映画デビュー作。前作の短編映画『ボン・ボヤージュ』では、地中海における深刻な移民問題に焦点を当てた。世界の多くの映画祭で上映され、第89回アカデミー賞の最終選考にも残った。そして、本作では、トランプ前大統領の移民政策以降、不法移民を強制送還させるなど、アメリカが抱える社会問題を深掘りし、ドキュメンタリータッチで見事に描かれている。
双子の兄弟は、ペルーのオーディションで選ばれた本当の双子で、本作で映画デビューとなる期待の新人である。同じ女性を好きになり、普通なら仲違いを起こしそうな場面でも二人は信じられないほど仲がいい。そしてトラブルに巻き込まれ、帰らない息子たちを必死に探すたくましい母親の深い愛情がこの作品を温かくしている。 双子の兄弟は、市民権もなく何の力も持っていない自分たちのことを「透明人間」だと言った。セントラルパークやマンハッタン、マディソンスクエアガーデンなどの煌びやかな街並みと相反し、大都会の小さな古いアパートで暮らす移民の親子。アメリカの移民問題を背景にした家族の絆に注目したい。
『ニューヨーク・オールド・アパートメント』
1月12日(金)より新宿シネマカリテほか全国ロードショー
配給:百道浜ピクチャーズ
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