24.04.05 update

本年度読売演劇大賞の大賞受賞後、初となる藤田俊太郎演出の最新舞台 ミュージカル『VIOLET』

 藤田俊太郎の演出舞台を初めて観たのは2016年だった。『Take Me Out』、ミュージカル『手紙』、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』の3本を立て続けに観た。そして、藤田俊太郎のことをもっと知りたくなり、17年に弊誌「コモ・レ・バ?」に登場していただき、ご一緒に本多劇場から始まる下北沢散歩を実施した。『ジャージー・ボーイズ』の日本版初演の演出により、読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞した直後だった。作品は最優秀作品賞に輝いた。「オリジナル版が凡庸に思えるほど刺激的な舞台」「単なる翻訳物を超える密度で新鮮な驚きに満ちた舞台」「蜷川幸雄の遺志を受け、師の演出手法を現在形に生まれ変わらせた。鮮やかな精神のリレーだった」など、多くの賞賛の言葉が贈られた。

 そう、藤田俊太郎は、2005年から15年まで、蜷川幸雄作品に演出助手として関わった。15年にもミュージカル『The Beautiful Game』の演出により、読売演劇大賞優秀演出家賞、杉村春子賞を受賞している。読売演劇大賞で言えば、21年には『天保十二年のシェイクスピア』『VIOLET』『NINE』の演出で最優秀演出家賞を受賞し、『天保十二年のシェイクスピア』『NINE』は優秀作品賞も受賞している。そして、本年、『ラビット・ホール』、ミュージカル『ラグタイム』の演出により、読売演劇大賞最優秀演出家賞に加えてついに大賞を受賞した。今回紹介するミュージカル『VIOLET』は、大賞受賞後初の演出舞台となる。

 梅田芸術劇場と英国・ロンドンのチャリングクロス劇場との共同で企画・制作し、演出家と演出コンセプトはそのままに、英国キャスト版と日本キャスト版を各国それぞれの劇場で上演したミュージカル『VIOLET』。19年のチャリングクロス劇場での上演は、藤田にとってロンドンでの演出デビューを果たした記念作であり、オフ・ウエストエンド・シアター・アワードで作品賞をはじめ6部門にノミネートされた。20年には、コロナ禍での中止を乗り越え、3日間限定上演で日本での日本人キャスト版を実現した。今回、待望の再演を迎えることになる。

 物語の舞台は1964年のアメリカ南部の片田舎。差別や偏見、公民権運動を背景に進行する。幼い頃、父親による不慮の事故で顔に大きな傷を受けたヴァイオレットは、25歳の今まで人目を避けて暮していたが、あらゆる傷を癒す奇跡のテレビ伝道師に会うために、生まれて初めて一人旅に出る。ヴァイオレットの旅を通してのさまざまな出会いと成長の物語が展開される。

 ヴァイオレット役は、映画、テレビドラマ、舞台、さらには音楽活動と多彩に活動し、唯一無二の魅力との評判を得ている三浦透子と、数々のミュージカルでの豊かな表現力と、抜きん出た歌唱力が注目されている屋比久知奈のWキャスト。ヴァイオレットと運命的な出会いを果たす、物語のカギを握る黒人兵士と白人兵士の2人の男性。黒人兵士役は『ジャージー・ボーイズ』『ラグタイム』でも藤田作品に出演しており、最近のテレビドラマ「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」でのゲイの男性役も記憶に新しい東啓介が、白人兵士役は『黒執事』『エリザベート』『太平洋序曲』をはじめミュージカルの舞台で活躍中の立石俊樹が演じる。

 さらに、旅で一番最初に出会いヴァイオレットの人生に大きな影響を与える老婦人役には、宝塚時代には男役も女役もこなし、藤田演出の『天保十二年のシェイクスピア』にも出演している樹里咲穂、奇跡のテレビ伝道師役に、『ミス・サイゴン』『レ・ミゼラブル』といった大作ミュージカルでも知られる原田優一、ヴァイオレットの顔に一生残る傷を作った父親役に、20年版でも同役を演じ、『Take Me Out』、ミュージカル『手紙』『ジャージー・ボーイズ』と藤田作品ではおなじみのspiという布陣。そのほかにも、sara、若林星弥、森山大輔、谷口ゆうな、と個性豊かな顔ぶれとなった。

 青井陽治から演出を受け継いだ『LOVE LETTERS』、『ミネオラ・ツインズ』、大竹しのぶの一人芝居『ヴィクトリア』、ミュージカル『東京ローズ』などなど、藤田俊太郎演出作品からは、その都度異なる色彩が放たれる。3日間限定の上演だった20年版を見られなかった人たちには、待ちに待った再演。藤田俊太郎曰く「これまで、このミュージカルに関わり、一緒に創作してきた仲間たちに心からの敬意を込めて、24年再演をあらたな気持ちで再構築します」という2024年版の開幕は4月7日。

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