24.11.13 update

WEST.の濵田崇裕&神山智洋のW主演による劇場を笑いで包み込む幸福度100%のコメディ・ミュージカル『プロデューサーズ』

 現在、東京・渋谷の東急シアターオーブにて、ミュージカル『プロデューサーズ』が上演中だが、とにかく楽しいミュージカルである。本作は、1968年の同名映画をもとに、2001年にメル・ブルックスが脚本・作詞・作曲を務め、ネイサン・レインとマシュー・ブロデリックの出演でブロードウェイで大ヒットとなったミュージカル。その年のトニー賞において史上最多の12部門で最優秀賞を受賞した。メル・ブルックスといえば、アカデミー賞、エミー賞、グラミー賞、トニー賞の4賞すべてを受賞したことがある、数少ない人物である。

 その後、ロンドンのウエストエンド、カナダ、ドイツ、オーストラリア、韓国など世界各国で上演され、2005年には、東京厚生年金会館で、ボブ・アマラル、アンディ・テイラーのブロードウェイ・キャストによる来日公演が行われている。同年には、ブロードウェイ・オリジナル主要スタッフとオリジナル主演キャストによる映画も製作され大ヒットした。

 日本語翻訳版は、2005年に井ノ原快彦と長野博のコンビにより青山劇場で初演され、2008年に東京国際フォーラムと、大阪のシアターBRAVA!で再演された。2008年には福田雄一演出版が東急シアターオーブにて上演され、井上芳雄と、吉沢亮・大野拓朗のWキャストのコンビにより上演された。

 
 物語の舞台は1959年。かつてはブロードウェイでヒット作を飛ばしたが、今は落ち目のプロデューサー、マックス・ビアリストック。打ち出す芝居がことごとく不入りで破産寸前。彼のオフィスに会計事務所から会計士レオ・ブルームが派遣されることから、話はひょんな方向へ転がり始める。帳簿を調べていたレオは、成功した芝居よりも失敗した芝居のほうが利益を産むことに気づく。それを聞いたマックスは、計画的に芝居を失敗させて出資者から集めた資金をだまし取り、大儲けする詐欺の方法を思いつく。ブロードウェイのプロデューサーになるのが夢だったレオを丸め込んで一世一代の詐欺興行を打つべく、〝最悪の脚本家、最悪の俳優、最悪の演出家〟を探し始める。 

 


 今作でマックスを演じるのは本格ミュージカル初出演となるWEST.の濵田崇裕。気の弱い会計士でマックスに振り回されるレオを演じるのは、約9年ぶりのミュージカル出演となる、同じくWEST.の神山智洋。歌、ダンスの巧さに加え、二人の息の合ったコメディ・センスが抜群で、随所で見せ場を作ってくれる。さすが20年におよぶ付き合いだと納得させられるパートナーシップだ。「この二人だからこそ成立するということを感じた」と二人も声をそろえる。

 
 また、初舞台、初ミュージカルで今作ヒロインである女優志望のウーラを演じるのは、近年は俳優としても注目を集めている王林。高い歌唱力に加え、舞台での姿が美しく、加えて面白い。ブロードウェイ版、ウエストエンド版、映画版にも俳優として出演しており、今作で演出を務めるジェームス・グレイは、王林を「すばらしく美しく、しかも面白い。これは大変珍しく、最高だ」と絶賛する。ウーラはスウェーデン人ということで、スウェーデン訛りの英語を話すというところも、テレビでも青森訛りで話している王林の質にはまった。


〝最悪の劇作家〟フランツ・リープキンを演じるのは『レ・ミゼラブル』『三銃士』『エリザベート』などの舞台のみならず、映像作品、さらには声優としても活躍中の岸祐二。〝最悪の演出家〟ロジャー・デ・ブリを演じるのは舞台、映像作品のいずれの作品でも印象的な演技で多くの支持を得ている新納慎也。今回も、ゲイのマイペースな演出家を嬉々として演じている。ロジャーのアシスタントでありカップルでもあるカルメン・ギアを演じるのは、『テニスの王子様』『GREASE』などのミュージカル舞台で、観客の熱い視線を浴びている神里優希。新納と神里の大胆で繊細な演技のかけあいは、巻き戻して観たくなるほど、笑いと歌と所作、そして美しさで圧巻の見せ場を作ってくれる。それに、神里のジャンプが美しい。さらに、投資家である裕福な老婦人の一人、ホールドミー・タッチミーには、多くのミュージカル作品をはじめとする舞台作品で国際的にも高い評価を得る島田歌穂と、舞台人としても変幻自在な演技センスを見せている友近がWキャストで演じる。息のあった見事なカンパニーである。

1 2

映画は死なず

新着記事

  • 2024.11.21
    「星影のワルツ」「北国の春」という2つの大ヒット曲...

    千昌夫「夕焼け雲」

  • 2024.11.20
    能登の子どもたちや被災者を、美しい音楽で励ましてく...

    被災者に勇気を与えるウイーン・フィルの活動

  • 2024.11.20
    指揮・坂本龍一✕東京フィルハーモニー交響楽団による...

    坂本龍一の伝説のコンサートを映画館で!

  • 2024.11.19
    ベートーヴェン「第九」初演から200周年の記念すべ...

    12月31日特別先行上映、1月3日から1週間限定公開!

  • 2024.11.19
    敷寝具から枕まで世界最大級の熟睡ブランド、〈マニフ...

    特別モデル【エコ サンドロ】限定3000台の予約開始!

  • 2024.11.18
    公募展の発祥地〈東京都美術館〉のテーマは「ノスタル...

    芸術活動を活性化させ、鑑賞の体験を深める

  • 2024.11.18
    女優「高峰秀子」と妻「松山秀子」─日本映画史に燦然...

    高峰秀子という生き方

  • 2024.11.15
    本格イタリアンをご家庭で、日清製粉ウェルナの「青の...

    応募〆切: 12月20日(金)

  • 2024.11.15
    京都のグンゼ博物苑で、昭和の激動時代の魅力を伝える...

    グンゼの創業の地で、「昭和レトロ展」

  • 2024.11.14
    「嵐」と並ぶシングル58曲連続トップテン入りを果た...

    THE ARFEE「メリーアン」

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!