散歩は、街を一冊の本のように読むことだ。だから、スマホでの撮影は、読書感想を忘れないための、メモ書きみたいなものなのだ。この「スマホ散歩」を読んでくれた人が、それぞれの街を読書し始めたらとても嬉しい。何か楽しい風景に出会えることを願っている。
第68回 2025年12月25日
街中で、ウエイトを見かけると、撮影する。看板が動かないように置いてあったり、工事現場の注意喚起標識の重しだったり、地味な活躍だけれど、好きなのだ。
何故気になるのかというと、芝居の現場ではウエイトは重要な道具なのだ。幕を作動させるロープや、照明を吊るすバトンの固定に、なくてはならない道具なのだ。

だから、街中でも見かけると、つい頑張れと声をかけたくなってしまうのだ。(笑)
実は、私の長年の夢にも、ウエイトがある。「重さ博物館」という博物館を作りたいのだ。その博物館は、球体、円錐などの鉄のかたまりしか展示されていない。その大小の鉄のかたまりを、入館者は手に持って、重さを確かめるのだ。

そう、その博物館は、世界のあらゆる物の重さを知る場所なのである。だから、鉄のかたまりの横にはプレートが貼ってあり、「トイプードル」「国会の扉」「ミロのヴィーナス」「ミッキーマウスのぬいぐるみ」「ジャンボジェット機の機長席」「鴨」とか書いてある。手に持つと、その重さを知ることが出来るのだ。そして、その博物館は、「あの重さが知りたい」という、入館者のアンケートによって鉄のかたまりが増えていく。そんな博物館なのである。初代館長に私がなる。それが夢なのだ。(笑)

はぎわら さくみ エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の特別館長、金沢美術工芸大学客員名誉教授、、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。












