20.11.11 update

ラジオはいつの時代も人と人を繋いでくれる

3月11日の震災で人々の大きな支えになったのはラジオだった。それは、戦後の混乱を救ったのがラジオであったという事実に重なる。戦争で別れ別れになった肉親を探す「尋ね人の時間」が放送され、連続放送劇「鐘のなる丘」が人々の心を癒した。公開録音の「三つの歌」の開始は昭和26年、司会は宮田輝アナウンサー。「素人のど自慢」「とんち教室」「日曜娯楽版」「二十の扉」「一丁目一番地」…… 夏休み、子供たちの一日はラジオ体操で始まり、学生にとってのラジオは大学受験講座に、深夜放送。「オールナイトニッポン」「パック・イン・ミュージック」、「セイ!ヤング」は受験勉強の孤独な夜の親しい友だちだった。同じ時間にそれぞれの場所で、いろんな人が同じ番組を聞いている。ラジオは人と人を繋いでくれるのだ。今、NHKの「ラジオ深夜便」が人気だと聞く。いつの時代にもラジオは、みんなの生活と共にある。


ラジオはみんなの友だち

昭和の言葉と声の記憶

文=川本三郎

昭和の風景 昭和の町 2011年10月1日号より


ラジオを聴きながら夕餉を囲む一家団欒

 ラジオの時代があった。

 昭和二十七年(1952)から翌二十八年にかけて放送されたNHKのラジオドラマ「君の名は」(菊田一夫原作)は、その時間、銭湯の女湯ががらがらになるといわれたほどの大人気になった。

 子供たちのあいだではやはりNHKの新諸国物語シリーズ(北村寿夫原作、福田蘭童音楽)が人気になり、とりわけ「笛吹童子」と「紅孔雀」は私などの世代には忘れられない思い出のラジオ番組になっている(のちに東映で映画化された)。

 昭和三十一年頃の大阪を舞台にした宮本輝原作、小栗康平監督の『泥の河』(81年)では「赤胴鈴之助」が聞こえてくる。

 福井栄一原作の少年剣士を主人公にした漫画をラジオドラマにしたもので、子供たちを夢中にさせた。

 主題歌 〽剣をとっては日本一の……はいまでも歌える。子役時代の吉永小百合が出演していたことでも知られる。

 ラジオを聞きながら夕食をする。一家団欒の幸福なひとときだった。

昭和初期のラジオ。国産鉱石ラジオ受信機の第一号をつくったのは、シャープの早川徳次で、大正15年のこと。(写真提供:豊後の無線博物館)

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