ホラー、ではない。しかしなぜか怖い、不気味だ。現代に、もはや欠かせなくなったライフラインと言っていいだろう、日本中の片田舎のどこにもあるコンビニエンス・ストア。そこで起こる不思議な、とんでもなく不明な、しかしそこはかとなく笑える異次元アドベンチャー映画である。
主人公はスランプ中の悩める脚本家・加藤(成田凌)が、ある日、恋人(片山友希)の飼い犬〝ケルベロス〟にパソコンで執筆中の脚本を消されてしまう。腹を立てて〝ケルベロス〟を山奥に捨ててしまうが、人のいい加藤は犬を探しにレンタカーで再び人里離れた山奥に戻る。が、途中で車が故障して立ち往生。霧に包まれている辺りを見回すと不気味に佇むコンビニ「リソーマート」に出くわす。ここから加藤は異世界に入り込むのだが、実はそのことに気づいてはいない。コンビニで働く妖艶なオーナーの妻・惠子(前田敦子)と出会い誘惑され、胸にタトゥーを彫った挙動不審な夫(六角精児)との三角関係に陥るが、二人は逃走し、死者の魂が彷徨う温泉街に……。
と、ネタバレを覚悟で整理してみたが、いやはや、ここまで辿り着くのに時間がかかる。次から次に出くわす奇妙なシーンをきっちり頭に叩き込まないと何が何だか……。
コンビニエンス・ストーリーとは、様々な人間が集まる場であり、客と店員が交錯し、売り場と見えないバックヤードの境界線があって、奇才、三木聡監督にとって「生と死の世界が地続きであるという神話の世界を僕なりに織り交ぜています」ということなのだ。どうですか、お分かりでしょうか?
企画は、ジャパンタイムズで日本映画の批評を行う映画評論家でプロデューサーのマーク・シリング。イタリアのウディネ・ファーイースト映画祭の日本映画のコンサルタントも務めるシリングが三木監督の才能にほれ込み本作をオファー。5年間ふたりで企画を温め誕生した異色作というふれ込み。8月5日(金)から、テアトル新宿ほか全国公開。
『コンビニエンス・ストーリー』
出演:成田凌、前田敦子、六角精児、片山友希、岩松了、渋川清彦、ふせえり、松浦祐也、BIGZAM、藤間爽子、小田ゆりえ、影山徹、シャララジマ
監督・脚本:三木聡
企画:マーク・シリング
配給:東映ビデオ