9月9日の富山オーバード・ホールを出港し、新潟、大阪公演を経由して、11月1日~12月6日の新橋演舞場までの、2022年劇団☆新感線42周年興行・秋公演の大スペクタクルな航海がスタートした。演目は『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』。天海祐希扮する海賊アンヌが古田新太演じる石川五右衛門とともに大暴れする『薔薇とサムライ~GoemonRock OverDrive~』の続編であり、新感線の大人気シリーズ『五右衛門ロック』のスピンオフ作品である。
〝海賊女王の帰還〟というサブタイトルからは、往年のハリウッド・スター、エロール・フリンやタイロン・パワーらの主演で人気があった、冒険活劇シリーズが連想され、心を躍らせながらスクリーンにくぎ付けになっていたころのドキドキワクワク感がよみがえる。本作でも、五右衛門とアンヌの冒険譚が、新感線の魅力である歌・ダンス・アクションたっぷりに演じられる。更に、本作は、新感線としては『メタルマクベス』以来4年ぶりとなる生バンドが入る〝音モノ〟Rシリーズ公演で、生バンド演奏により、舞台上と客席が一体となり、心も体も大きく震えるに違いない。
12年ぶりに海賊女王アンヌが舞台に戻ってくるということで、「世代交代の話にしたい」と思ったという新感線座付き作家の中島かずき。そこで、今回は若い世代のキャスティングが組まれることになった。映像作品ではすでに数多くの作品で魅力を発揮しており、今回が新感線初参加となる石田ニコルと神尾楓珠、新感線初参加にして初舞台となる西垣匠といった新鮮なメンバーに、年に1作品のペースで参加し、もはや準劇団員といった存在の早乙女友貴が加わり新世代の布陣が整った。前作から続投の森奈みはるに加えて、五右衛門やアンヌと対立する大きな存在として、2017年の『髑髏城の七人』Season風以来5年ぶり2度目の新感線参加となる生瀬勝久も参戦。高田聖子、粟根まことのベテラン劇団員の名前も並ぶ。総勢41名のキャストと5名のバンドメンバーによる、まさに〝フルスペック新感線RX〟である。
ほぼ4年に一度という、まさにオリンピックイヤー的に新感線の舞台に出演している天海祐希。今回の舞台は天海演じるアンヌを主軸とした物語になるが、「古田演じる五右衛門というアイコンがいるだけで〝なんでもアリ〟の世界観になる」とは、演出のいのうえひでのりの弁。宝塚時代をほうふつとさせる姿をはじめ、必要以上に何度も着替えて登場する〝着せ替え天海姐さん(©いのうえ)〟は、今回も実施される。また、東京公演の新橋演舞場では、花道を使った演出も楽しみだ。『阿修羅城の瞳』でも魅せた花道での天海の颯爽とした姿も、大きな見せ場にもなるだろう。
それにしてもポスターに写る天海祐希のなんともカッコいいこと。そして古田の、〝ただ者ではない〟出で立ちが、非日常の劇的世界へと誘い込む。芝居を観る楽しみは、すでにこのときから始まっている。新感線ならではの、賑やかで、派手で、笑えて、そしてシリアスな、舞台の魅力が詰まった芝居がまた観られるのは、演劇ファンにとって〝お祭り騒ぎ〟な〝待ってました〟の大イベントである。
作:中島かずき 演出:いのうえひでのり
出演:古田新太 天海祐希/石田ニコル 神尾楓珠/高田聖子 粟根まこと 森奈みはる 早乙女友貴 西垣匠/生瀬勝久 他