1人は、妻や娘を泣かせてきた、リッチでインテリなロマンスグレー。1人は、亡き妻を今 でも深く愛し、息子から敬愛される生粋の漁師。そんな2人が恋に落ちた!? 父親にひとか たならぬ思いを抱く、双方の家族は大混乱! 妻や娘たち、息子たち、果ては両家の孫まで 巻き込んで、夏のバカンスは予測不能な大騒動に。果たして両家の諍い、2人の恋の行方は――。
<Story>
バカンスを過ごすため海辺の町の別荘に、セレブなカステルヴェッキオ家のちょっとエキセントリックな面々が集まって来る。主(あるじ)のトニ、トニの妹イーダとその恋人ジャンルコーネ、娘のペネロペ、腹違いの娘オリヴィアとその娘のエロディ。今年は、離れの別棟を人に貸すことにした相手は、大きなバナナボートを抱えてやって来た庶民的なペターニャ家。父カルロと次男のディエゴ、長男のサンドロは妊娠中の妻カロリーナとわんぱく坊主アダムを連れて。11歳になる次男のディエゴは、甥にあたる年下のアダムと何歳かしか違わない。実は両家の顔合わせのため、トニが恋仲にあるカルロとその家族を招待したのだった。トニは家族にあっけらかんと結婚したい旨を伝えるが、カルロは息子たちにどうしても言い出せず――。
これは人生を情熱的に、そしてハッピーに謳歌する代表国イタリアの、〝これぞ、人生!〟と快哉を叫びたくなる、大人の「恋と家族」の物語である。イタリアでは2016年5月11日に下院議会で、同性カップルの結婚に準ずる権利を認める「シビル・ユニオン法」が可決されたとはいえ、「父親同士の結婚」に〝嫌悪〟という同じ反応をするのが、トニの長女ペネロぺとカルロの長男サンドロ、その心中にあるものは――というのが本作の肝。
とりわけダイバーシティに対する感度も鋭く、〝誰もが自分らしく生きる〟主義を信条としてきたペネロぺの反応には、頭では分かっていても当事者となった途端に心が追い付かないその姿に、誰もが同じように反応するだろう。一方、サンドロには、制度が整っても保守的な価値観はなかなか変えられない現実の壁を思い知らされる。そんな2人がいかに変化していくかを通して、家族とは、幸せとは、人生とは――を、深く考えさせられる感動作である。
【ゲイの父親カルロに嫌悪する息子、サンドロ】に代わってコメントします。
自分の父親が、ゲイであることを知ったら……、そして年上の爺さんと結婚することが分かったら、その息子としてどう振る舞うべきか。すでに結婚もして、わんぱくな男の子もいて、妻のお腹には2人目が妊娠中、僕らは幸せな家庭なのだ。親父にはまだ11歳の息子もいるというのに、冗談じゃない。
【父親が男と結婚することに怒り狂う娘、ペネロペ】に代わってコメントします。
だいたい享楽的な生き方で、いつも勝手気まま。何日も家を空けて浮気して帰ってくる父が、今度は男と婚約する!? 私は父の愛情なんて知らなかったから、パニック症の発作で苦しむようになったんだわ。許せない、絶対に阻止してやる!
このロマンティック・コメディ、イタリア本国では376館で43週間ロングランの大ヒットを飛ばした。さらに、日本でもオンラインで開催されたイタリア映画祭2021で一足先に公開され、視聴者数第1位に輝いた注目作だ。
『泣いたり笑ったり』は、12/2(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開 配給:ミモザフィルムズ