雑多なモノが溢れるスタジオで、映画の登場人物の動きやシーン、雰囲気を追いながら、想像もつかないような道具と技を駆使してあらゆる生の音を作り出す職人を「フォーリーアーティスト」という。
本作は金馬奨に多数ノミネートされ台湾映画界の生きるレジェンド、フー・ディンイーの40年に及ぶフォーリー人生を記録したドキュメンタリーであり、ひとりのスタッフの目を通して見た台湾映画史である。70本を超えるフーの担当作品への言及を中心に、ホウ・シャオシェン、ワン・トン、エドワード・ヤンなど、台湾映画が広く世界に認知された1980年代のニューシネマの登場、そしてそれ以前の台湾映画も垣間見ることができる貴重な記録である。音響制作の老巨匠たち、さらには台湾映画のサウンドトラックを制作する伝説的な人物たちが映画の音を取り巻く環境の変化、未来のフォーリーの存在についても語る。
台湾ではドキュメンタリー映画の製作が活発で、映画祭や上映会だけでなく劇場で公開され、身近な映画として親しまれている。1982年生まれの監督 、ワン・ワンロー(王婉柔)は、国立清華大学を卒業後イギリスのExeter Universityで脚本を学んだ。2017年に発表した『擬音』は東京国際映画祭でも上映され、2020年にはアジアを席巻した台湾の漫画家 チェン・ウェン(鄭問)の人生を追ったドキュメンタリー『千年一問』を発表して話題を呼んだ。
『擬音 A FOLEY ARTIST』
監督|ワン・ワンロー
出演|フー・ディンイー、台湾映画製作者たち
製作総指揮|チェン・ジュアンシン 製作|リー・ジュンリャン
配給・宣伝|太秦
2022年11月19日(土) K’s cinemaほか全国順次公開