普段着の味わいがする「梅ヶ丘」を楽しむ
TOWN STORY 2011年10月1日号より
新宿から各駅停車で13分、身近な町なのに訪れる機会のなかった梅ヶ丘。俳優・光石研さんに誘われて小田急線梅ヶ丘を訪ねることになった。これまでの住いのほとんどが小田急線沿線という光石研さんにとって梅ヶ丘もまた、親しく接してきた町である。季節折々の木々の装いが人々をなごませる自然があり散歩の足を何度も立ち止まらせる商店街の店々。それは決して特別な風景ではないが、町が当世風に様変わりする今の時代、懐かしい風景になってしまった。これからの季節、カーディガンでもひっかけて普段着で歩きたくなる町。梅ヶ丘は「何気ない日常」という個性を持つ町であった。
photograph by Tadashi Okakura
高校生のとき映画『博多っ子純情』でデビュー以来、映画にテレビにと実に数多くの作品に出演している俳優、光石研さん。2007年には年間12本もの映画に出演し、邦画助演出演ランキング1位の記録がある(「日経エンタティメント」調べ)。出演作が多いので、どの役の「光石研」が記憶に刻まれるかは人それぞれだろう。俳優としてのキャリアもすでに30年以上になるが、その歴史は光石さんの小田急線との付き合いの時間と重なる。「住まいがずっと小田急線の沿線なんです。千歳船橋、向ヶ丘遊園、経堂、なぜか離れられないんです。梅ヶ丘でも暮らしたことがあります」という光石さんにとっておきの梅ヶ丘をご紹介願うことにした。
梅ヶ丘の改札を出ると、北口と南口に分かれる。北口は羽根木公園や警察署や、図書館などがあり閑静な趣、片や南口は梅丘商店街があり活気が感じられる。いいバランスだ。ちなみに駅名は梅ヶ丘だが、地名は梅丘と記される。まずはジョギングでもよく訪れていたという、町の人たちの憩いの場所、羽根木公園へ。園内には650本もの梅の木が植えられており、梅の季節には、〈せたがや梅まつり〉が催され、咲き匂う梅の香を楽しむ多くの人で賑わう。普段は緑豊かな園内を散歩する人あり、テニスを楽しむ人あり、と、〝世田谷時間〟ともいえる豊かな生活時間が流れる場所である。公園のすぐ近くには北沢川緑道があり、ここでも散歩の足をしばし休める人、木陰で読書をする人などに出会った。