new 20.07.03 update

表紙で振り返る「コモレバ」の10年(前編)

第一回

昭和の銀幕の女優たちとのめくるめく時間

前編

文=二見屋良樹(「コモレバ」編集長)

2009年9月25日にフリーペーパー「コモレバ」を創刊して以来11年目の春、編集部は6月29日の発行を目指して第44号の編集作業を進めていましたが想像を絶する新型コロナウイルス蔓延問題により、第44号の発行延期を決めました。
そこで、今回はWebマガジンにて「コモレバ」をお届けすることにします。手元にある43号までの表紙を並べて見ていると、折々の撮影時のことが甦ります。
昭和を代表するキラ星の如き女優のみなさまにも表紙を飾っていただきました。今回は、「コモレバ」アーカイブ コレクションから表紙で振り返る「コモレバ」として、まずは第20号までの表紙撮影の裏話などを前・後編で、ご紹介したいと思います。
まるでSF映画を思わせるようなこのたびの状況で緊急事態宣言が解除され規制が緩和されつつあるとはいえまだまだ大手を振って外出を楽しめる生活ではありません。
「コモレバ」Webマガジンが、ご自宅で過ごされる時間の少しでもお慰みになれば幸いです。 


撮影=渞忠之(浅丘ルリ子、富司純子、草笛光子、岡田茉莉子、佐久間良子、岩下志麻、若尾文子、山本富士子)、神ノ川智早(岸惠子)、平岩享(八千草薫)

 現在発行の43号までの「コモレバ」の表紙のあり方として、3つの時期に分けることができる。創刊号から20号までは昭和を代表する銀幕の女優たちと各界の男性にペアで登場していただいた。21号から30号までは、すでに鬼籍に入られたり、引退なさっていてということで撮り下ろしがかなわないものの、昭和の映画や舞台を語る上で見過ごすことができない、次の時代に伝えるべき女優の方々。そして31号から現在までは、一つの映画や舞台をいい作品に仕上げるという同じ志を持つ仲間の方たちにご登場いただいている。まずは創刊号から第20号までの表紙を2回にわたって振り返ってみる。

表紙のスタイルを決めた
浅丘ルリ子&村松友視の
2ショット

創刊号
浅丘ルリ子&村松友視
(2009年9月)

 昭和を生きてきた人たちと向き合う雑誌として企画した「コモレバ」。2009年9月25日発行の記念すべき創刊号の表紙を飾ってくださったのは、女優の浅丘ルリ子さんと作家の村松友視(視は示に見)さんだった。浅丘さんには巻頭インタビューに登場していただくことが決定しており、村松さんには特集企画で箱根にご一緒していただき、「村松友視の箱根時間」なる原稿をご執筆いただくことになっていた。「コモレバ」創刊に当たり、まず決まったのが、浅丘さんのインタビューと、村松さんの特集企画、そして故・児玉清さんに連載で巻頭エッセイを執筆していただくことだった。児玉さんには、お亡くなりになる直前の2011年春号まで全7回ご執筆いただいた。

 表紙についてはまだ決定案が出るにいたっておらず、さまざまな意見が飛び交う中、人として輝きを放ちながら、プロフェッショナルとしても第一線で活躍を続ける50代以上の女性に登場していただく、という意見が浮上し、巻頭インタビューに出ていただくことになっていた浅丘さんに決定した。ただ、新雑誌として何か印象に残る表紙のあり方はないかと思案する中で、男女のペアでご登場いただくという方向性が見えてきて、ならば、特集に出ていただく村松さんに浅丘さんとご一緒していただくのはどうかということになり、早速お二人に打診したところ、「すてきな企画ね」「表紙だけの撮影でご一緒するとは贅沢だね」とお2人とも快諾してくださった。

 お2人は同じ年齢で、旧知の間柄。浅丘さん主演で村松さんが脚本を担当したテレビドラマ「風ものがたり」もある。因みにドラマの演出は蜷川幸雄さんだった。撮影は白金にあるバーで実施され、終始なごやかな雰囲気ながら大人の成熟した時間が流れていた。撮影を担当してくださったのは渞忠之(みなもと ただゆき)さんで、人物の表紙なら撮影は渞忠之さんと決めていた。昔のフィルムをイメージしてあえてセピアカラーの表紙にした。久しぶりにご一緒させていただいたが、第2号以降も表紙を担当していただくことになった。その後浅丘さんには、テレビドラマ「やすらぎの郷」「やすらぎの刻 道」で現在まで3回も表紙に登場していただいている。浅丘さんは、大女優というオーラを放ちながらも、その場の空気を和ませる不思議な魅力を纏った人で、気遣い、気配りの人でもあり、現場の人たちはみんな浅丘さんのことが大好きになってしまう。私も気安く〝ルリ子さん〟と呼ばせていただいている。また、村松さんにはこれまで6回、特集の原稿をご執筆いただいた。村松さんの原稿には、いつも期待を大きく裏切られる。まったく想像の及ばない着地点に毎回連れていかれるのである。そのたび、私は編集者としての幸せを感じている。

1 2 3 4 5

こちらの記事もどうぞ
映画は死なず

新着記事

  • 2024.12.03
    きわどい熟年女性の性愛表現から母の優しさまでフラン...

    『山逢いのホテルで』見どころ

  • 2024.12.03
    東京ステーションギャラリー「生誕120年 宮脇綾子...

    応募〆切: 1月20日(月)

  • 2024.12.02
    橋幸夫・舟木一夫・西郷輝彦・三田明の青春歌謡四天王...

    松竹青春歌謡映画のヒロイン 尾崎奈々

  • 2024.12.02
    大注目のボートレーサーが集結した「2025年 BO...

    応募〆切:12月20日(金)

  • 2024.11.28
    第5回【東宝映画スタア☆パレード】酒井和歌子&内藤...

    文=高田雅彦

  • 2024.11.28
    クリスタルキングが歌唱した「大都会」の唯一無二のハ...

    クリスタルキング「大都会」

  • 2024.11.27
    第55回【萩原朔美 スマホ散歩】いまどきのカバン考...

    見事な自己表現!

  • 2024.11.25
    クリスマス・イブに手塚治虫の歴史的名作が蘇る!映画...

    応募〆切:12月15日(日)

  • 2024.11.21
    「星影のワルツ」「北国の春」という2つの大ヒット曲...

    千昌夫「夕焼け雲」

  • 2024.11.20
    能登の子どもたちや被災者を、美しい音楽で励ましてく...

    被災者に勇気を与えるウイーン・フィルの活動

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!