星由里子の初めてのテレビドラマ出演は67年の「さくらんぼ」だった。山口崇、石立鉄男、笠智衆らと共演した青春ホームドラマの主人公で、主題歌も歌った。「さくらんぼ」は現在のテレビ朝日系で放送されていた「ナショナルゴールデン劇場」枠のドラマ「フルーツ・シリーズ」の第一作で、その後松原智恵子主演「レモンの涙」、新珠三千代主演「ももくり三年」と続き、フルーツ・シリーズを不動のものにしたと言われる68年のヒット作「フルーツポンチ3対3」に、再び星が起用される。三姉妹の母親(高峰三枝子)が、男ばかり三兄弟(川崎敬三、山口崇ら)の子持ちの男やもめ(大坂志郎)と再婚したことにより巻き起こる2家族同居のドタバタを描いたホーム・コメディで、星は主人公である三姉妹の次女を演じた。三女は当時人気が出始めた吉沢京子だった。相手役は「さくらんぼ」に続き山口崇。山口崇といえば、「天下御免」の平賀源内役、「大岡越前」の徳川吉宗役で知られるが、この時代の山口崇は、浅丘ルリ子、吉永小百合など主演女優たちの相手役として女性視聴者の熱い視線を浴びていた。ちなみに、その後、浜美枝主演で「レモンスカッシュ4対4」というドラマも作られている。
そのほかにも、中村吉右衛門共演の「ながい坂」、火曜日の女シリーズの一篇で口の不自由な若妻を演じた「木の葉の舟」と、続篇「木の葉の家」、夏目漱石の『門』を早坂暁が脚色した加藤剛、山﨑努共演「わが愛」、ショーケンこと萩原健一、中野良子、二谷英明共演「新宿さすらい節」、大河ドラマ「風と雲と虹と」「篤姫」、連続テレビ小説「あぐり」、当時夫であった花登筐脚本による昼帯ドラマで水商売の世界で健気に逞しく生きるホステス役が視聴者の支持を受け、続篇も作られた「ぬかるみの女」、「科捜研の女」シリーズの沢口靖子の母親役などと多くのテレビドラマでも活躍した。
さらに舞台女優としても、司葉子、山田五十鈴、乙羽信子、市川染五郎(現・二代目松本白鸚)、中村吉右衛門共演の『徳川の夫人たち』、北大路欣也共演『復活』『佐渡島他吉の生涯』(菊田一夫演劇賞受賞)、長谷川一夫、京マチ子共演『源氏物語』、染五郎(現・松本白鸚)、吉右衛門共演『さぶ』、山田五十鈴共演『香華』、八千草薫共演『女系家族』、司葉子共演『午後の遺言状』などなど、活躍の場は多岐にわたった。
2012年には子供のころからの夢がかない、「コモ・レ・バ?」の表紙に出ていただくことになり、映画やテレビドラマの思い出話を直にうかがうことができた。初恋の人に再会したような感慨深い時間を過ごすことができた。
星由里子の女優の仕事を並べたが、作品を通して星由里子さんのことを思い出してほしかった。だが、まだまだこんなものではない。大女優として語られることはなかったかもしれないが、多くの人々の青春のページを彩り、スクリーンに確かな足跡を残した、語るべき昭和の女優であった。
文=渋村 徹
※プロマイドの老舗・マルベル堂では、原紙をブロマイド、写真にした製品を「プロマイド」と呼称しています。ここではマルベル堂に準じてプロマイドと呼ぶことにします。
マルベル堂
大正10年(1921)、浅草・新仲見世通りにプロマイド店として開業したマルベル堂。2021年には創業100年を迎えた。ちなみにマルベル堂のプロマイド第一号は、松竹蒲田のスター女優だった栗島すみ子。昭和のプロマイド全盛期には、マルベル堂のプロマイド売上ランキングが、スターの人気度を知る一つの目安になっていた。撮影したスターは、俳優、歌手、噺家、スポーツ選手まで2,500名以上。現在保有しているプロマイドの版数は85,000版を超えるという。ファンの目線を何よりも大切にし、スターに正面から照明を当て、カメラ目線で撮られた、いわゆる〝マルベルポーズ〟がプロマイドの定番になっている。現在も変わらず新仲見世通りでプロマイドの販売が続けられている。
マルベル堂 スタジオ
家族写真や成人式の写真に遺影撮影など、マルベル堂では一般の方々の専用スタジオでのプロマイド撮影も受けている。特に人気なのが<マルベル80’S>で、70~80年代風のアイドル衣装や懐かしのファッションで、胸キュンもののアイドルポーズでの撮影が体験できるというもの。プロマイドの王道をマルベル堂が演出してくれる。
〔住〕台東区雷門1-14-6黒澤ビル3F
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