映画では、まず『ノンちゃん雲に乗る』だろう。鰐淵晴子は10歳、母親役は原節子だった。何て美しい母娘なんだろう。60年代前半には岩下志麻、桑野みゆきらと並ぶ松竹の看板スターで、多くの映画に出演している。やんちゃでおちゃっぴいなあんみつ姫を演じた『あんみつ姫の武者修業』の鰐淵も、美しく、可愛らしく魅力たっぷりだった。『伊豆の踊子』の三代目ヒロイン薫も演じている。一校の学生「私」役は津川雅彦だった。田中絹代、美空ひばり、吉永小百合、内藤洋子、山口百恵、と歴代の薫役の顔ぶれからも、鰐淵が松竹〝推し〟のスター女優だったことがわかる。
また、横溝正史作品にもヒロインとして複数作に出演しているが、78年のテレビ版「八つ墓村」、79年の映画版『悪魔が来りて笛を吹く』の鰐淵は、妖しく、美しい女優になっていた。また、浅丘ルリ子が主演した77年のテレビドラマ「炎の中の女・椿姫より」では、浅丘のライバルのような娼婦を演じ、二人の共演シーンには、胸がときめいたことが、思い出される。映画『平成無責任一家 東京デラックス』『遥かな時代の階段を』『眠れる美女』の3作品で、95年には毎日映画コンクール女優助演賞を受賞した。
86年に、当時編集を担当していた雑誌で、鰐淵晴子の取材が実現できた時には、本当にドキドキした。艶やかな雰囲気、魅力的な声、そして親しみやすい人柄、とてもチャーミングな人だった。
文:渋村 徹(フリーエディター)
※プロマイドの老舗・マルベル堂では、原紙をブロマイド、写真にした製品を「プロマイド」と呼称しています。ここではマルベル堂に準じてプロマイドと呼ぶことにします。
マルベル堂
大正10年(1921)、浅草・新仲見世通りにプロマイド店として開業したマルベル堂。2021年には創業100年を迎えた。ちなみにマルベル堂のプロマイド第一号は、松竹蒲田のスター女優だった栗島すみ子。昭和のプロマイド全盛期には、マルベル堂のプロマイド売上ランキングが、スターの人気度を知る一つの目安になっていた。撮影したスターは、俳優、歌手、噺家、スポーツ選手まで2,500名以上。現在保有しているプロマイドの版数は85,000版を超えるという。ファンの目線を何よりも大切にし、スターに正面から照明を当て、カメラ目線で撮られた、いわゆる〝マルベルポーズ〟がプロマイドの定番になっている。現在も変わらず新仲見世通りでプロマイドの販売が続けられている。
マルベル堂 スタジオ
家族写真や成人式の写真に遺影撮影など、マルベル堂では一般の方々の専用スタジオでのプロマイド撮影も受けている。特に人気なのが<マルベル80’S>で、70~80年代風のアイドル衣装や懐かしのファッションで、胸キュンもののアイドルポーズでの撮影が体験できるというもの。プロマイドの王道をマルベル堂が演出してくれる。
〔住〕台東区雷門1-14-6黒澤ビル3F
あなたが心をときめかせ、夢中になった、プロマイドを買うほどに熱中した昭和の俳優や歌手を教えてください。コメントを添えていただけますと嬉しいです。もちろん、ここでご紹介するスターたちに対するコメントも大歓迎です。