20.12.07 update

クラウドファンディングで届いた映画を愛する人々の熱い想い

ミニシアター・エイド基金が注目され
若いお客様が増えてきました

――6月6日に再開なさったときの客席数の対策などはどのようになさったのですか。

久保田 客席は2つ空きにしましたので、80弱の席数でした。当館は通常2本立てですが、2本上映すると滞在時間も長くなりますし、再開当初は混雑を避けるために、日替りで1本ずつ上映して完全入替制にしました。2本観られないから2回足を運んでいただくというご不便をおかけしましたが、最初の3週間は初めてイレギュラーな上映スタイルで営業しました。6月27日からは通常の2本立てに戻し、座席数も50パーセントにしました。

――現在は70パーセント弱の席数で営業なさっていますが、どのような状況ですか。

久保田 今はまだ年配の方々の足が遠のいている状況ですが、ミニシアター・エイド基金というクラウドファンディングが、全国を網羅した取り組みで話題になり、全国から注目を集めることになり、メディアなどでもいろいろと取り上げられていたので、若い人たちが、全国にあるギンレイホールのような小さな映画館の存在を知ってくれることになったのだと思うんです。以前より若い世代のお客様が大勢来てくださるようになりましたね。当館は2本立てで上映していますが、窓口でチケットを求められる方は2本見ようと思っていらっしゃる方は少ないんです。特に若い方はそうなんですが、2本立てで2本観られるというシステム自体もご存じないんですね。AとBの2本上映していても、Aを2枚くださいという感じなんです。よろしければ2本共ご覧いただけますよとご案内しても、2時間以上の作品を2本観て4時間、5時間なんて、そんなに観ないよ、という方がほとんどだったんです。でも、ここ最近、みなさん時間ができたのでしょうか、はたまた経済的事情なのか、あるいはシステムを理解してお得だと感じられるようになったのか、若い方たちもほとんどみなさん2本ご覧になるようになりました。それが最近一番嬉しいですね。

――以前は名画座と言えば暗くて汚いというイメージがあり、映画ファン以外の若い人たちや女性たちには不人気でした。まさにコロナ禍では敬遠されるイメージの場所かもしれないです。

久保田 若いお客様たちがご来館なさっての第一声は「渋ッ!」というのが多いですね。でもそこが、名画座としての映画館の雰囲気を演出してくれているのかもしれません。当館ではいち早く女性をターゲットとしたというところが、今のギンレイホールに結びついていると思います。女性が来られる映画館にしなければだめということで、改装して臭い、汚いイメージを払拭して、女性たちに好まれるような作品をセレクトして、多くの女性客に支持されてきています。当館はこれからもこの路線でいきたいと思っています。そうは言ってもやはりいろんな方に観ていただきたいので、アクション映画や、若者向けの作品も上映します。ガラッとイメージを変えるつもりはありませんが、お客様に飽きられないようにチャレンジすることは必要だと思います。建物は古いですが、クラウドファンディングのご支援で館内はすべて抗菌コーティングを施し、トイレやロビーの手洗い器は自動水栓に替えたり、劇場内や地下トイレ前には空気清浄器を設置するなどできる限りの対策は講じました。

――現在、また新規感染者、重症者数が増え、まだまだ先の見えない状況です。

久保田 映画館では入場者数の制限が100パーセント緩和されている状況ですが、当館では当分7割弱の座席数にとどめ、上演回数も減らして、休憩時間を長く取り、座席の消毒や換気をするなど、できる限りの感染拡大予防対策をとってはいても、絶対に安全ですから、どうぞいらしてくださいとは、残念ながら言い切れるものではありません。ご高齢者のお客様の足が遠のいていることも確かです。お客様ご自身のお気持の中で、安心して映画を観られるというように思えるようになられてから、いらしていただければと思っています。

ギンレイホールでは神楽坂映画祭の開催も行っており、芸術の秋の恒例行事として定着しつつある。2009年には創業35周年記念として「RAMLA×ギンレイホール シネマフェスティバル」として、飯田橋駅前にて映画看板絵展を開催し、駅を行き交う人々の注目を浴びた。
映画キャラバン隊による35㎜レトロ映写機での野外上映会も実施し、多くの観客を集めている。写真は2009年に開催された「RAMLA×ギンレイホール シネマフェスティバル」での35㎜レトロ映写機による野外上映会。2021年4月16日公開の映画『キネマの神様』のために山田洋次監督は、レトロ映写機などの視察に訪れた。「ギンレイホールは休息と研究が両立する素敵な場所だった。映画ファンならよだれが出るような粋な二本立ての番組をどれほど堪能したかわからない。あなた方は日本映画の、この国の文化の希望であり、とても大切な場所です」という思いを込めて映画『キネマの神様』を製作している、とクラウドファンディングのためにメッセージし、ギンレイホールのスタッフたちを大いに感激させた。『キネマの神様』は原田マハさんの同名小説の映画化であり、小説に登場する名画座<テアトル銀幕>は、ギンレイホールがモデルである。出演者は沢田研二、菅田将暉、永野芽郁、宮本信子ら魅力的な顔がそろった。

インフォメーション

今後のギンレイホール上映スケジュール

1度の入場で2本の映画の鑑賞が可能。
1回目の開場時刻は上映開始時間の30分前、2回目以降は15分前。

上映スケジュールは、こちらをご覧ください。


〔住〕東京都新宿区神楽坂2-19 〔問〕03-3269-3852

〔料金〕一般1,500円、中学生以上の学生1,200円(要学生証提示)、60歳以上1,000円、夫婦50割引2,000円(どちらかが50歳以上であれば、ご夫婦お2人で2,000円)、障がい者割引1,000円(要障がい者手帳提示)、夜間割引1,000円(夜間のラスト1作品の入場に限り割引)

〔ギンレイ・シネマクラブ〕ギンレイ・シネマクラブに入会すると、その日から当館で上映する映画を1年間、何度でもご覧いただける「シネパスポート」が発行される。シングルカード11,000円、2人で入場できるペアカード19,800円、1度に5人まで入場できる法人・グループカード33,000円の3種類がある。すべて税込。ちなみに、『キネマの神様』の原作者である原田マハさんは「ギンレイのシネパスポートは、私に映画を観る楽しみを教えてくれた父の宝物でした」と語っている。

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映画は死なず

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