23.11.27 update

第7回 待望の大林宣彦監督との初仕事に挑んだ『水の旅人 侍KIDS』公開までのスリリングな日々、そして『タスマニア物語』のこと

1981年にフジテレビジョンに入社後、編成局映画部に配属され「ゴールデン洋画劇場」を担当することになった河井真也さん。そこから河井さんの映画人生が始まった。
『南極物語』での製作デスクを皮切りに、『私をスキーに連れてって』『Love Letter』『スワロウテイル』『リング』『らせん』『愛のむきだし』など多くの作品にプロデューサーとして携わり、劇場「シネスイッチ」を立ち上げ、『ニュー・シネマ・パラダイス』という大ヒット作品も誕生させた。
テレビ局社員として映画と格闘し、数々の〝夢〟と〝奇跡〟の瞬間も体験した河井さん。
この、連載は映画と人生を共にしたテレビ局社員の汗と涙、愛と夢が詰まった感動の一大青春巨編である。

▲〝映画ファンのための映画まつり〟という趣旨で、76年に初開催された「おおさか映画祭」。2006年からは、おおさかシネマフェスティバルと名称が変更になった。94年2月に開催された「第19回おおさか映画祭」では作品賞に輝いた『月はどっちに出ている』の崔洋一監督、主演の岸谷五朗、最優秀主演女優賞を受賞したルビー・モレノらに加え、作品賞では2位になった『僕らはみんな生きている』で脚本賞を受賞の一色伸幸氏、『眠らない街 新宿鮫』と合わせて主演男優賞受賞の真田広之、助演男優賞受賞の岸部一徳ら、すばらしき映画人たちが顔をそろえた。後列右から3番目が特別賞を受賞した筆者。

 

『病院へ行こう』(1990)の後は、怒涛のように映画を創った。5年位は「がん患者」でもあり、抗がん剤治療も続いていたが、見かけ上、仕事には完全復帰した。片方の足を一部失くしたので、自転車は乗れない、走れない、屈伸できない、正座出来ない……など機能上のハンデはあったが、映画製作とはほとんど関係無かった。一点だけ、映画絡みで言えば映画館の狭めの椅子だと、足が曲げられず、今でもそうだが、座席は必ず通路のある端に座るようになった。
 映画製作が止まらなくなったフジテレビで、最も重要な映画となるのは〝東宝系夏休み公開〟だ。
『病院へ行こう』は僕自身の企画にもかかわらず、「来年の夏休み映画を」との指令が出る。組織人としては光栄なことかもしれないが、ようやく退院して『病院へ行こう』をそのままメインでやれるのかと思いきや、〝夏の映画〟の企画が優先であるとのお達し。1989年夏である。公開まで1年しかない。「転んでもただでは起きぬ」とか「土壇場に強い」とか、麻雀なら嬉しいが、「1年後の東宝系で配収25億円目標!」と言われ、「企画は?」と聞くと、「それを河井がこれから考えるんだよ!」とあっさり言いきられ、「わかりました……」というしかない。
 これから企画を考えて、撮影は冬場で、公開は夏休み。『南極物語』のように清涼感があって夏休みに大ヒット! は経験しているものの、あんなことは滅多に実現できることではない。

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映画は死なず

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