ちらしデザインに惹かれ「フラッパーズ」を観る
「舞台『月の谷』『赤い石』『らん』スピンオフ企画『あず姫は家出をした』草木も眠る丑三つ時 月の光で身体をしっかり洗ったら 私は海を目指して家を出る」(小劇場楽園)
「ここ風~其ノ十七~ 作演出・霧島ロック『ッぱち!』久し振りにこの街に足を踏み入れた 桜並木の坂の上にある学校 暗くなるまで野球をした公園 みんなと蝉取りをした神社 あの頃のままのモノとそうでないモノと アイツは変わらんままでいてくれてるやろか それとも……」(シアター711)
「アガリスクエンターテイメント第27回公演『発表せよ!大本営!』1942年6月。行け行けドンドンの楽勝ムードで臨んだミッドウエー海戦にて歴史的な大敗を喫した日本軍。戦勝パーティーまで準備した海軍は、ショックも冷めやらぬまま新たな問題に直面する。――この結果をどう国民に発表する?」(駅前劇場)
「流山児★事務所公演『赤玉GANGAN~芥川なんぞ、怖くない~』純粋で正直でエロくて頑固 このペンで、天下を取ってやる! と叫んでは見たものの世間の圧力にはすぐ屈し 小さなコトからくよくよ悩む だけど夢見る力は誰にも負けない! そんな奴らの青春活劇、ここにあり!」(ザ・スズナリ)
集めたちらしはみな面白そうだ。その中からデザインが素敵な「ジョーズカンパニー25周年記念公演『フラッパーズ~私たちにできること~』強豪陸上部の部室から遠く離れた棟の片隅に…控えの、そのまた控えの選手たちが出入りする部屋があった。レギュラーになれるチャンスもなく、ただ放課後毎日決められたように集まってくる選手たち…私たちって期待も必要もされてないの? と自分自身に各々が問いかけている。そんな彼らに思いがけない命令が下る!」(小劇場楽園)を見に行こう。
演者たちの懸命な姿に笑い、涙し、感動した
本多劇場に隣接した地下1階の小劇場楽園は、床から15センチほどの平舞台を、角に大きな柱のあるL字の客席が囲む。まだ役者のいない空舞台の装置がすでにそこにあるのが小劇場のおもしろさで、ここで何が始まるのかと想像させる。今日は高校陸上部のウエアやタオルが干されている部室。キャパ
60人満員の客は女性が多く、小学生の子供連れもいる。やがて舞台は暗くなり始まった。
女子高の名門陸上部に憧れて入部したが、補欠は部室も別で、練習したくてもグラウンドは使えず、正選手のウエアの洗濯と整理が仕事だ。「わたしたちこれでも陸上部?」とぼやく4人に、鬼の女子マネージャーは「きちんとたたみなさい」とハッパをかける。
そんな彼女たちに下った学校の「思いがけない命令」は、「音楽部コンサートの女子合唱5人が食あたりで全員倒れたので、急遽明日のコンサートに代役で出ろ」というもの。
「なんで私たちなの」「そんなの無理」と猛反発するが、陸上ではないがこれも注目される舞台かもと、かつて音楽部でソプラノだった1人の指導で発声から始め、きれいにまとまるようになり張りきると、再び学校から「音楽部のメンバーは治ったのでいらない」という返事がくる。
「代役すらおろされる」「バカにしないでよ」「私、先生に抗議する」という部員に、マネージャーはふりしぼるような声で「……でも音楽部の生徒も練習を重ねてきたのよ」とつぶやく。沈みこむ5人の1人が、やがてすばらしい提案をする。
―― 泣きました、笑いました、感動しました。
何よりも若い女優5人の、演じる陸上部員も演劇をする自分も同じと、役をわが事としている熱気だ。若いだけに挿入される歌や踊りはお手のもの。物語が進むにしたがい、互いにそれまでかかえてきた挫折やコンプレックスがしだいに見えてきて、それが自分たちに大切なものとわかって友情となってゆく清々しさ。彼女たちは正選手よりも価値あるものを手に入れたのだ。
2チームが交替出演している今日の「チーム桜」は12歳から21歳まで平均15歳! いちばん若い中学1年生は今回初舞台。週2回、中目黒で練習3ヶ月、夏休みの今、発表となったそうだ。しかも舞台後すぐに「東日本大震災義援金」の箱を持って並ぶ心がけよ。
もう一度書きたい、ほんとうにすばらしかった。それは、観客の前で、皆で何かを表現したいという気持ちの純粋さだった。応援します!!