12月6日、都内の自宅で亡くなられた俳優・歌手の中山美穂さんについて、映画担当プロデューサーだった、河井真也さんは、岩井俊二監督の劇場版長編映画第1作品の映画『love Letter』で、中山美穂さんを主演に抜擢した当時を振り返りながら、その死を悼んだ。7日深夜、函館映画祭の審査員をつとめる河井真也さんから函館のホテルから追悼の言葉がとどいた。
……映画『波の数だけ抱きしめて』が終わった後、暫くして相談された。滅多にそんなことは言わない彼女が、言葉を振り絞って『私の代表作と言える映画を創ってほしい』と。
『水の旅人』の主題歌のレコーディングの為に彼女と、作曲をしてもらった久石譲さんと一緒にロンドンへ行った。初めての作詞もしてもらった。タクシーの中でも、彼女は言葉を選びながら詩を書いた。歌手でアイドルとしてのトップランナーの中山美穂と、一方で女優の顔をそこで存分にみた気がした。
日本に戻り、その時、長編デビュー映画『Love Letter』を一緒に準備していた岩井俊二監督に「中山美穂」を持ちかけた。脚本や岩井監督の深夜ドラマのVHSを渡したが、何も読まず、見ずに彼女は出演を決めた。おそらくロンドンで話している時に決意していたのであろう。自分のために考えてくれた映画に賭けてみよう、と。
30年前の12月、雪の小樽ロケ終盤。彼女は『ずっとこの時間が続いてほしい』と。そして岩井俊二×中山美穂の『Love Letter』はブルーリボン賞主演女優賞など多数獲得した。韓国、中国はじめ海外でも大ヒットした。
彼女は言った。「私のこの10年は『Love Letter』に出会うためにあった」
そう言ってもらえる映画を共に出来たことに感謝し、この映画を世界中の人に見続けてもらうことで、美穂ちゃんを忘れないことを約束する。……
なお、コモレバWEBマガジンの2024年1月24日発信した河井真也さんの連載の第9回「私を映画に連れてって!」では、中山美穂さんが『love Letter』の主演に抜擢した舞台裏から女優賞を総なめにした経緯などにも触れている。
第9回【私を映画に連れてって!】岩井俊二監督劇場長編映画第1作『Love Letter』で、中山美穂は多数の女優賞に輝いた