23.05.22 update

第1回 40年前製作発表の前日に高倉健の出演が決まった『南極物語』    

 入社前にその「ゴールデン洋画劇場」で放送した『キタキツネ物語』が映画歴代最高の44.7%(1979年放送)という驚異的な視聴率を獲得していた。この数字は『千と千尋の神隠し』(2003年放送:46.9%)に抜かれるまで1位だった。その映画の監督が蔵原惟繕氏だった。他にも角川映画の『人間の証明』など邦画の視聴率は30%を越える作品があった。アカデミー賞作品賞の『ディア・ハンター』など良質な洋画も多く放送していたが、視聴率は10%前後のこともあり苦戦していた。それでも枠タイトルは「ゴールデン【洋画】劇場」で、イメージを大事にする資生堂などのスポンサーが付いていて、番組提供料が他の番組枠より随分高かった。それもあり、邦画を放送する場合は確実に視聴率が獲れることが条件で「ゴールデン洋画劇場特別企画」等と表記して放送された。
 その頃の角川映画はTBSで放送した『犬神家の一族』はじめ高い視聴率を獲っていた。角川映画の放送権を如何に獲得するか・・・が大きな課題になっていた。

▲フジテレビジョンに入社翌年の1982年10月、ミラノ国際映画見本市会場での筆者。

 当時の映画部長は、あらゆる映画人と付き合い、なおかつ外国映画の情報をいち早くキャッチし、購入に結び付けるべく年中、カンヌやアメリカの映画祭に出張していた。私もお零れに預かり、配属から1年位で、ミラノ国際映画祭(MIFFED)に連れて行ってもらった。生まれて初めての海外だった。

 通常、2時間ドラマは制作費5千万円前後、連続ドラマの1話が3~4千万円前後の時代であるが、映画の放送権は高かった。視聴率の獲れる角川映画なら3億円にもなり、当然『男はつらいよ』シリーズなど安定した視聴率が約束されれば1億円以上の値段である。
 映画部長は角川映画との共同製作も模索していた。一度だけ映画部長と角川春樹氏の打ち合わせにカバン持ちとして銀座に行った。結果は上手く纏まらなかった。
 しかし、考えてみれば、当時の日本映画の製作費が3億円前後とすると、高い場合の放送権1作分と同等とも考えられる。仮に4億円の製作費を折半して共同製作して、劇場収入が芳しくなくとも、放送で20%以上獲れればしめたものと考えることも出来る。2億円で視聴率20%を購入した、と。あるいは、半分出資することで、ヒットすればリターンもある。

 もっと凄いのは洋画である。『スター・ウォーズ』の新作の放映権等は、10億円を遥かに越え(抱き合わせの作品は付いてくるが)20億ラインになりフジテレビは退いた。
 ある意味では確実に25%以上の視聴率が予想出来、しかもレンタルビデオも配信もない時代で、劇場公開以降で初めて観ることの出来るチャンスである。しかも無料視聴である。局のイメージアップも考慮すると購入価格が高いのも致し方ない面があった。
 ただ、もし年間トータルの映画放送予算が50億円(これでも1回あたり1億円に迫るが)あったとしても、1本に10億、20億を投じることになれば、その他の編成される映画は、購入価格の安い、例えば香港の日本未公開映画やリピート放送になってしまう。実際、私も香港に買い付けに行き、日本未公開映画を購入したりした。『燃えよデブゴン』シリーズは1作目は日本公開作だが、それから10本近くは未公開で1本200万円くらいで購入した記憶がある。しかも主演のサモハン・キンポーが主演している映画は元タイトルに関係なく、放送ではすべて『燃えよデブゴン~』(⑩まで)である。因みに香港映画でも、ジャッキー・チェン主演作は大人気で確実に20%以上の高視聴率を獲得できたので1億円以上の購入価格だった。ジャッキーものもあまりの人気で劇場公開作が無くなり、古い未公開映画を『ジャッキー・チェンの~』と名付け高視聴率を獲った。

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