原題は『What’s Love Got to Do with It?』――お隣同士で小さい頃から仲良しの幼馴染のゾーイ(リリー・ジェームズ)とカズ(シャザド・ラティフ)。カズの見合い結婚(支援結婚)をするという選択に、ドキュメンタリー監督の仕事を持つゾーイは、カズをカメラで追う。両親と一緒に結婚相談所に出向き、花嫁候補にあれこれと〝注文〟させるばかりで、パキスタン系イギリス人のカズは彼らの意のまま。ゾーイは「愛もなくて結婚できるの?」と疑問を投げかける。息子の結婚相手に細かい条件をつける両親は、「自分たちも親に従って写真だけ見て決めたが、結婚して何十年も幸せな生活をつづけている」というばかり。一方、ゾーイにとっては、結婚とは運命の出会いがあって愛し合う二人が結ばれるもの、と信じてやまないが、なぜか「これだ!」という男と巡り合わない焦りがつのっている。離婚してシングルの母親キャス(エマ・トンプソン)も心配して交際相手探しに躍起になっている。
さて結婚相談所の婚活パーティーではうまくいかなかったカズに、親の知り合いからの紹介話が舞い込んで、清楚で上品な女を装ったフィアンセ候補のマイムーナ(サジャル・アリー)を両親が気に入り、あっさりゴールイン。カズのスピード結婚になぜか動揺するゾーイは、カメラを抱えて結婚式会場に臨むが、そこで見たマイムーナの破廉恥なハジけぶりにあきれてしまう。ゾーイはカズに「愛なしには結婚しないで」と訴える――。
何かというと多様性が求められる〝今〟に、多民族、多文化が交錯する街ロンドンで起きるであろう、ラブストーリーだ。何が何でも恋愛結婚でなければならない、という一辺倒な結婚観を押し付けるのでもなく、見合い結婚を〝支援〟結婚として肯定しながらカズのようにマイムーナとともにゆっくりと結婚生活に入って愛を見つけようとする覚悟は、まさに人生観と文化の違いではある。かつての日本の夫婦の多くが見合い結婚だったことを思うと、さもありなん、と納得。惚れた腫れたの恋愛結婚後、現実の生活に失望する多くのカップルがいる一方で、世界の人口の25%の19億人が暮らす南アジアでは、見合い結婚は決して異質なことではなく日常的な事実であることを教えてくれる。
多文化が花咲く最先端の街ロンドンを舞台に、パキスタン系イギリス人たちの異国情緒あふれる豪華なウエディングシーンやイスラム教徒として信仰心に篤く極めて真面目で真摯な家族愛や人生観に触れられることも貴重な発見ではあった。『アバウト・タイム』『ブリジット・ジョーンズの日記』の製作陣が、すべての悩める現代人に贈る、新たな愛と人生のガイドブックムービー、この冬にお薦めのラブストーリーをお見逃しなく。
『きっと、それは愛じゃない』
12月15日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
主演:リリー・ジェームズ『シンデレラ』『マンマ・ミーア!』ヒア・ウィー・ゴー』
監督:シェカール・カプール(パキスタン出身)
脚本:ジェミマ・カーン(イギリス出身)
配給:キノフィルムズ
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