現代アメリカを代表する作家のひとり、アリス・ウォーカー(1944~)が、自身の人生を題材にした『カラーパープル』でピューリッツアー賞と全米図書賞を受賞したのは、1983年のこと。85年にはスティーブン・スピルバーグ監督によって映画化された。時を経て『カラーパープル』出版40周年を記念し、スピルバーグに抜擢されたブリッツ・バザウーレ監督がメガフォンをとった『カラーパープル』がミュージカル映画となって、2月9日(金)より公開となる。
85年に公開された『カラーパープル』は、それまでのスピルバーグの作風とあまりに隔たりがあり、「賞狙い」、あるいは「スピルバーグには黒人の世界を描き切れない」とも揶揄され、アカデミー賞® 10 部門にノミネートされたにもかかわらず、無冠に終わったという過去がある作品だ。
物語は、1909年のジョージア州沿岸から始まる。セリー(ファンテイジア・バリーノ)は横暴非道な父親に逆らえず、二人の子供を産むが次々に里子に出されてしまう。唯一の救いは仲の良い妹のネティ(ハリー・ベイリー)と歌ったり教会に通ったりすることだったが、非情な父は子供を抱えたミスター(コールマン・ドミンコ)にセリーを無理やり嫁がせる。ネティも父親からの暴力を受け、嫁いだセリーの家に逃げ込むのだが今度は夫のミスターの嫌がらせを受け、拒絶したネティはセリーに手紙を書くことを約束しやっとの思いで逃げ出す。けれどもネティからの手紙はミスターが隠してしまい、セリーのもとに届かない。
これでもか、これでもかという仕打ちを受けながらも、おかれた場でユーモアを忘れず生きるセリーだが、男勝りのソフィア(ダニエル・ブルックス)や、街を出て歌手になる夢をかなえたシュグ(タラジ・P・ヘンソン)らの自立した生き方に感化され、家を出ることを決意する。そしてある出来事をきっかけに、セリーの未来は大きく動いていく──。
ブロードウェイミュージカルの実力派キャストがそろった本作は、本場のミュージカルの舞台を観ているようだ。スピルバーグ版の映画の衣装を監修したフランシーヌ・ジャミソン=タンチャックが本作でも衣裳を担当したが、セリーとネティの白いお揃いのワンピースや、歌手のシュグのステージ衣装もハッとするほど鮮やかで印象的だ。
前半は虐げられた運命をそのまま受け入れているセリーに、もどかしく苛立ちを覚えたが、笑うこともなかったセリーがソフィアとシュグに出会い、満面の笑みを浮かべ、未来に向かって力強く変わっていく姿が心に残る。生き別れた二人の子供たちをずっと思い続けたセリーに神様の計らいは優しかった。
『カラーパープル』
2月9日(金) 全国公開
製作:オプラ・ウィンフリー、スティーブン・スピルバーグ、スコット・サンダース、クインシー・ジョーンズ
監督:ブリッツ・バザウーレ
出演:ファンテイジア・バリーノ、タラジ・P ・ヘンソン、ダニエル・ブルックス、コールマン・ドミンゴ、コーリー・ホーキンズ、H.E.R. 、ハリー・ベイリー他
配給:ワーナー・ブラザース映画
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