物語の舞台は、2021年東京オリンピック開催直後、都会の喧騒に佇むゲストハウス「ココ」。住み込みバイトの詩子(山本奈衣留)は、元旅人でオーナーの博文とSNS にハマる住人、泉さん(吉行和子)と共に、慎ましくも満ち足りた生活を送っている。ココにやってくるのは、バイト先が潰れてしまい、目標もなくくすぶる存(たもつ)や、声優の夢を諦め就職しようとするも、両親から帰国を促されている中国人のシャオルーなど、悩みを抱える若者たち。そして笑顔でお客さんを迎える詩子にも、わけあって田舎を飛び出してきた過去があった……。
本作は、ゲストハウスに集う人々の交流と愛おしい日々を描いたヒューマンドラマ。世界14大映画祭の一つ、ワルシャワ国際映画祭でのワールドプレミア上映を皮切りに、すでに10 以上の映画祭で上映され、市井の人々への温かい眼差しと、色彩豊かな美しい映像で評価を得ている。
コロナ禍の影響で開催が翌年に延期された東京五輪を背景に、自身の生きる場所を模索し、これからの進路に思い悩む若者たちの物語を綴った本作。ゲストハウスの名前でタイトルにもある「ココ」には、場所を示す「此処」、そして誰しもがそれぞれの人生を歩んでいるという「個々」の意味が込められている。実際の撮影も五輪開催後の2021年に行われ、当時の空気感をリアルに捉えながらも、居場所の必要性や、個々人の人生を尊重することの大切さを問う普遍的なメッセージを伝え、観るものに爽やかな感動を与えてくれる。
監督は、18歳から独学で映像の世界に飛び込み、本作が長編デビューとなるこささりょうま。MV やドラマで培った確かな手腕と、自身のバックパッカーの経験を基に、今を切に生きる若者たちの機微と営みを丁寧に紡ぎ出す。劇中最後に流れる主題歌「36.5」は、東京府中発のギターロックバンド「kobore」による書き下ろし楽曲。懸命に生きる人々に寄り添ったメッセージソングで、共感を呼ぶ。また、ゲストハウスの聖地として知られ、日本のみならず世界中から宿泊者を迎える「toco.」で撮影を敢行。築100 年超の日本母屋を残す景観が、映画の世界観を引き立てている。
『ココでのはなし』
2024年11月8日(金)シネスイッチ銀座、シネマカリテほか全国順次公開
出演:山本奈衣瑠
結城貴史 三河悠冴 生越千晴
宮原尚之 中山雄斗 伊島 空 小松勇司 笹丘明里 三戸大久 / モト冬樹
吉行和子
監督:こささりょうま 脚本:敦賀 零 こささりょうま
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公式HP:cocohana-film.com