原題『Les Olympiades(オランピアード)』は、〈パリ13区〉の高層ビル街の総称で、1968年グルノーブルで開催された冬季オリンピックにちなんで名付けられた。13区は1970年代に再開発が進み、均質で均一な外観の高層建築群が建ち並んでいる。古典的なパリのイメージとは結び付かない都会の雰囲気に満ちていて、アジア系移民も多い。異国情緒に溢れチャイナタウンも活気がある。そんなパリ13区を舞台に人種、ジェンダー・・・、まさに多様性の時代を暗示させるように、モノクロームのドラマが展開してゆく。
青春物語とくくってもいいのだろうが、登場する若者たちは10代ではない。
高学歴ながらもコールセンターでオペレーターとして働く台湾系フランス人のエミリー (ルーシー ・チャン)は、奔放なセックスを楽しむ20代半ばの女性。ルームメイトになったアフリカ系フランス人の高校教師カミーユ(マキタ・サンバ)を、深く知ることもなく彼とのセックスにはまる。ソルボンヌ大学の法学生として復学した32歳のノラ (ノエミ・メルラン)。この三人は結果的に三角関係になるのだがそこは現代のパリっ子たち、悲観的になるでもなく・・・。ノラは元ポルノ女優のアンバー・スウィート(ジェニー・ベス)のアダルトサイトヘアクセスし、自身の身に起きたことを語り出し親密になってゆく。カミーユは美しく聖母のようなノラに強く惹かれながらも、ユーモアセンスのあるエミリーが恋しくなり、エミリーとノラの間で揺れる・・・。
今年70歳、『ゴールデン・リバー』『ディーバンの闘い』の鬼才ジャック・オディアール監督待望の最新作は、『燃ゆる女の肖像』監督のセリーヌ・シアマと、若手注目監督・脚本家レア・ミシウスと共同で脚本を手がけた〝新しいパリ〟の物語。フランス映画界屈指の世代を超えたコラボレーションは大きな注目を集めた本作は、カンヌ国際映画祭で絶賛、セザール賞5部門ノミネートと話題をさらったミレニアル世代の若者たちの恋愛模様。『モード家の一夜』や『マンハッタン』にオマージュを捧げながら、洗練されたモノクロームで映し出す、誰も知らなかったパリの物語。 4月22日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開。
監督:ジャック・オディアール
脚本:ジャック・オディアール、セリーヌ・シアマ、レア・ミシウス
出演:ルーシー・チャン、マキタ・サンバ、ノエミ・メルラン、ジェニー・ベス
配給:ロングライド
©PAGE 114 – France 2 Cinéma
©︎ShannaBesson ©PAGE 114 – France 2 Cinéma