舞台は、伝説のカリスマ・シェフが腕を揮う、孤島の高級レストラン「ホーソン」。本作の脚本家のウィル・トレイシーはこう回想する。「ノルウェーで個人所有の小さな島にある高級レストランで食事をしたときに、乗ってきたボートが島を離れてゆくのを追いながら、4時間はここを出られない、何かあったら大変だぞ」という恐怖感を感じた、と。『ザ・メニュー』のアイデアはこの体験から生まれた。長年の脚本パートナーのセス・リースとの名コンビは極上のスパイスである風刺の精神を効かせ、想像を超えた映像に仕立て上げた。
世界で最も予約の取れないレストラン、ホーソンに招かれた11人のプロフィールから。偏執的なグルメマニアのタイラー。高級料理の知ったかぶりをするタイラーに辟易しながら同行するたった一人の招かれざる客、マーゴ。料理人に煙たがられている著名な料理評論家のリリアンは、「シェフのスローヴィクを見つけて育てた」と横柄な態度で公言し、腰巾着の雑誌編集者テッドをはべらせてきた。俳優業が落ち目になっている映画スターはその名を伏せて参加する。グルメ番組の司会に転身を図ろうとしているが、同行したアシスタントのフェリシティは彼が味音痴であることを知っている。だが、高級レストランでのマナーなど分かっていない下品な二人である。これまでホーソンの1250ドルのディナーを何度もリピートしてきた金持ちの熟年カップル、リチャードとアン。二人の心は通わなくなっていて、無言で口を動かすだけだったが、時の経過とともに夫リチャードの裏切りにアンは気づいていく。実はホーソンのオーナー企業はIT産業で成功した成り上がり。ITで大金をつかんだゆえに特権階級意識が鼻持ちならない、ソーレン、ブライス、デイヴの3人組がわがもの顔でテーブルを陣取った。
予約の取れない高級レストラン、ホーソンのテーブルに11人を招いたシェフ/スローヴィクは果たしてどんなもてなしをするのか。そしてスローヴィクと招かれざる客マーゴの一触即発の戦いが始まろうとしている。
Story
アメリ力北西部・太平洋沖の小島にたたずむ高級レストラン、ホーソン。船が島に到着して給仕長のエルサに名前を告げたマーゴは、タイラーが別の女性と来るはずたったことを知る。スローヴィクがふるまう豪奢な料理を味わえるのは、選ばれた特別な客だけ。想定外の客となってしまったマーゴは、エルサから不審の目を向けられながらも入店を許される。
巨大なドアをくぐると、奥には舞台のようなオープンキッチンが広がり、シャープな制服 に身を包むスタッフたちが、整然とした動きで盛り付けを始めていた。総勢11人の今宵の客が席に着くと、スローヴィクが悠然と現れ、彼の指示のもとアミューズブーシュがサーブされる。料理の撮影は禁止というお達しを破り、素早くスマホで撮影しうっとりと味わうタイラーに、「なぜ料理にそこまで?」と呆れるマーゴ。客たちのおしゃべりで雑然となったダイニングに、突然スローヴィクが両手を打ち鳴らす音が響き渡る。厳かな前口上の締めくくりに、「一つだけお願いがあります。食べないでください」と宣告するスローヴィク。そして、ポカンとする客に「昧わうのです。味覚で、嗅覚で」と諭すのだった。続けてスローヴィクは、1品目の料理に込められた、自然の偉大さと人間の儚さについての〝ストーリー〟を語り出す。タイラーは「感動した」と涙をぬぐうが、〝スローヴィク劇場〟に違和感を覚えるマーゴのテンションは、さらに下がるばかり。再びスローヴィクの手が打ち鳴らされ、2品目の説明が始まると、客席に戸惑いが広がる。ジョークとも皮肉ともとれる料理に、「イカれてる」「演出だ」と反応も様々だ。「バカにされてる」と憮然として一口も食べないマーゴは、スローヴィクに料理の何が悪いのかと詰間されるが、「何をいつ食べるかは自分で決める」と毅然とはね返す。恐怖のフルコースのはじまり――
監督:マーク・マイロッド
脚本:セス・リース&ウィル・トレイシー
出演:シェフ/スローヴィク(レイフ・ファインズ)
エルサ(ホン・チャウ)
マーゴ(アニャ・テイラー=ジョイ)
タイラー(ニコラス・ホルト)
リリアン・ブルーム(ジャネット・マクティア)
テッド(ポール・アデルスタイン)
ジョージ・ディアス(ジョン・レグイザモ)
フェリシティ(エイミー・カレロ)
リチャード(リード・バーニー)
アン(ジュディス・ライト)
ソーレン(アルトゥール・カストロ)
ブライス(ロブ・ヤン)
デイヴ(マーク・セント・シア)
『ザ・メニュー』
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
11月18日(金)より TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー