萩原朔太郎の娘である萩原葉子の同名小説『天上の花―三好達治抄―』が、1966年の発表 から56年の時を経て映画化された。
脚本を担当したのは五藤さや香と、これまで多数の脚本賞を獲得してきた荒井晴彦。監督は、4時間超の大長編『いぬむこいり』(2017年)で話題をさらった片嶋一貴。達治を演じるのは唯一無二の存在感を放つ東出昌大、朔太郎の末妹・慶子には、新たな境地を切り拓く入山法子、朔太郎には独特の風格を持つ吹越満、詩人・佐藤春夫を演ずるのは『YAWARA !」「20世紀少年」などで世界的人気の漫画家・浦沢直樹、そして原作者を母に持つ萩原朔美、近年舞台でも活躍し、輝きを増す有森也実も出演する。そのほか林家たこ蔵、鎌滝恵利もアクセントを加える。本作は、戦争の時代に翻弄されつつ、詩と愛に葛藤しながら、懸命に生きた者たちへの鎮魂歌である。
Story
昭和になってすぐのこと、萩原朔太郎を師と仰ぐ三好達治は、朔太郎家に同居する美貌の末妹・慶子と運命的に出会う。たちまち恋に落ちた達治は、結婚を認めてもらうため北原白秋の弟が経営する出版社に就職するが、僅か2カ月で倒産。再び寄る辺なき身となった達治は慶子の母に貧乏書生と侮られて拒絶され、失意の中、佐藤春夫の姪と見合い結婚する。
時は過ぎ、日本が戦争へとひた走る頃、達治の戦争を賛美する詩は多くの反響を呼び、時代は彼を国民的詩人へと押し上げてゆく。しかし、朔太郎とはその戦争詩をめぐって関係が悪化してしまう。昭和17年、朔太郎は病死。そして4日後には慶子が夫・佐藤惣之助と死別する。
昭和19年、朔太郎の3回忌で再会した達治は、慶子に「僕は、16年4カ月、思い続けてきた」と伝え、妻子と離縁し、慶子を家に迎える。東京に空襲が迫りくる中で、身を隠すように越前三国にひっそり新居を構えた二人には、雪深い冬の過酷な生活が待ち受けていた。純粋な文学的志向と潔癖な人生観の持ち主である達治は、奔放な慶子に対する一途な愛とその裏返しの憎しみが次第に心を蝕んでゆき、二人の愛憎劇は思いも寄らぬ結末を迎える……。
「天上の花」とは、一般的に仏教用語で曼殊沙華、彼岸花のことをさすが、三好達治は、その詩のなかで、辛夷(こぶし)の花にその名をつけている。
『天上の花』
12月9日(金)より新宿武蔵野館、ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺他順次公開
公式サイト: www.tenjyonohana.com
Twitter:@tenjyonohana