23.02.20 update

宮沢りえがロシア文学最高峰の名作で魅せる愛の態(かたち) 『アンナ・カレーニナ 』

「幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」という有名な書き出しで知られる、ロシアを代表する文豪トルストイが1800年代後半に書き上げた長編小説『アンナ・カレーニナ』は、世界中から称賛され、『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』の作家ドストエフスキーに「芸術上の完璧であって、現代、ヨーロッパの文学中、なに一つこれに比肩することのできないような作品」と言わしめ、『ブッデンブローク家の人々』『ヴェニスに死す』の作家トーマス・マンもまた、「このような見事な小説、少しの無駄もなく一気に読ませる書物、全体の構成も細部の仕上げも一点の非の打ちどころがない作品」と評し、ロシア文学の最高峰とも謳われている。

 これまでも、古くから映画化、舞台化されており、タイトルロールのアンナ・カレーニナを、映画ではグレタ・ガルボやヴィヴィアン・リーも演じており、東宝ミュージカルでは、一路真輝が演じ再演を重ねた。そして、このたび、アンナ・カレーニナを演じるのは、現在を代表するトップ舞台女優として、意欲的に数々の作品で圧巻の芝居を見せてくれる宮沢りえ。2020年に上演を予定されていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い中止となった作品だけに、宮沢はじめ、キャスト、スタッフのこの作品への想いも、上演できる喜びもひとしお大きいのではなかろうか。宮沢は「温めた分だけ熱量の高い舞台にしたいと思っている」とコメントしている。

 さらに、役柄については、「アンナは本能に従って突き進む強さと、自分にブレーキをかけて葛藤する弱さと、二面性を感じる女性」「ジェットコースターのように激しい彼女の人生を演じるプレッシャーはとても大きい」と語っている。ただ、宮沢りえという女優は、プレッシャーが大きければ大きいほど、心をたぎらせ、輝きを放つ芝居を見せてくれることは数々の舞台で証明済みだ。今回も魅惑的な社交界の華である、アンナの美しさと哀しみとで、観客を惹きつけるに違いない。

 今回、演出を担当するのは、気鋭の演出家フィリップ・ブリーンで、日本で演出家として初お目見えしたのは2015年の『地獄のオルフェウス』だった。シアターコクーンのDISCOVER WORLD THEATREシリーズでは、17年に『欲望という名の電車』、19年に『罪と罰』、21年に『夜への長い旅路』と、同シリーズの最多演出家である。今回は、この名作を自身が新解釈で戯曲化し、破滅に向かうアンナの〝愛〟と、未来への希望を感じさせるリョーヴィンとキティの〝純愛〟とを対照的に描くという。宮沢りえのことを思いながら上演台本を執筆したというフィリップは「悲劇的で、優しくて、時にすごく滑稽で、でも究極的には深くて鮮やかで、散らかった人間の姿をご覧いただけると思います」と、日本の観客にメッセージを寄せている。

撮影:細野晋司

 その他の出演者は、恋には不器用ながらも真実の愛を見つけるコンスタンチン・リョーヴィンに、8年ぶりの舞台となる浅香航大。アンナと恋に墜ちる自信にあふれる美青年将校アレクセイ・ヴロンスキーに、21年の初舞台『彼女を笑う人がいても』以来2度目の舞台となる渡邊圭祐。リョーヴィンの求愛に応えるカテリーナ・シチェルバツカヤ(キティ)に、『夜への長い旅路』『広島ジャンゴ2022』など着実に舞台キャリアを積んでいる土居志央梨。加えて、キティの姉で、夫の浮気癖に悩まされながらも家族を愛するダリヤ・オブロンスカヤ(ドリー)に大空ゆうひ、ドリーとキティの母親シチェルバツカ公爵夫人に梅沢昌代、アンナの兄で、ドリーの夫、リョーヴィンの友人でもあるステパン・オブロンスキーに梶原善、アンナの夫で、アンナを愛しながらも表現する術を知らないペテルブルグ政府高官アレクセイ・カレーニンに小日向文世と、ベテラン俳優たちも結集。

撮影:細野晋司

 2023年2月24日、この日を3年間待ち続けた多くの演劇ファンの熱い視線を浴びるなか、奥深い感情に満ちあふれた華麗なる舞台の幕がいよいよ上がる。

撮影:細野晋司

COCOON PRODUCTION 2023
DISCOVER WORLD THEATRE vol.13
アンナ・カレーニナ

原作:レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ
上演台本・演出:フィリップ・ブリーン
翻訳:木内宏昌
美術:ナックス・ジョーンズ
出演:宮沢りえ 浅香航大 渡邊圭祐 土居志央梨
西尾まり 菅原永二 深見由真 金子岳憲
井上夏葉 高間智子 片岡正二郎 真那胡敬二
大空ゆうひ 梅沢昌代 梶原善 小日向文世 ほか

<東京公演>
〔公演日程〕2月24日(金)~3月19日(日)
〔会場〕Bunkamuraシアターコクーン
〔問〕Bunkamura チケットセンター03-3477-9999(10:00~17:00)

<大阪公演>
〔公演日程〕3月25日(土)~3月27日(月)
〔会場〕森ノ宮ピロティホール
〔問〕キョードーインフォメーション0570-200-888(11:00~16:00 日祝休業)

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