藤井隆のファンを公言する千葉雄大は、藤井と目が合った瞬間、そこから生まれるものがあって、そこから藤井とのセッションが始まるというくらい、息もピッタリのようだ。稽古で培ってきたことをしっかりとやりつつ、舞台上で起きることにも反応しつつ、そのときの感情も込めながら演じていきたいと。そして、今や、音楽が鳴ったら自然と体が揺れ動くような状態になっていて、観客とのセッションで劇場を揺らしたいと意気込みを語る。
原作小説も読み、映画も観ているという藤井は、いずれも80年代に書かれ、製作されていて、今の時代とは違う表現もあったが、それを今の時代にやれることには、ドキドキするものがあったと言う。そして、演出の福原は自由にのびのびとやらせてくれて、それをうまく調整してくれていると、福原への信頼も厚いようだ。
複数の役を演じ分けながら狂言回しとして、その時代や物語について観客との橋渡しのような役割を担っている富田望生は、新しい発見が多い稽古の時間を楽しんだという。裏で役を作って舞台に上がるタイプだったが、今回は十分な時間もなかった中で、自分の役がすべての登場人物の役に化けているのだという芯を理解したときに、大いに得るものを感じ、作品を楽しむことができたと、初日前の昂奮を隠し切れない様子である。
そして、福原充則は、観客それぞれの中に普段からある感情を、増幅して舞台で見せる。舞台の登場人物を通して感情が爆発するさまを楽しんでもらえると思うと語っている。
ゲネプロでは、誰が主役というより、登場人物それぞれに目配りがなされ、それぞれの役柄の個性が際立っているのを感じさせられた。千葉は、藩主という役柄の育ちの良さ、品性をその佇まいに感じさせながら、ハメを外し好き勝手し放題の天真爛漫さを魅力的に見せてくれる。音楽に心を酔わせる姿が爽やかである。藤井は、家老という立場をわきまえる役柄の中にも、持ち前の遊び心で、観客を惹きつけ舞台を沸かせる芸達者ぶりである。そして、家臣の一人を演じている大鶴佐助が、セリフに表情をもたせ、立ち居振る舞いやスウィングするようなダンスのステップに、天性かと思える無邪気さを感じさせてくれ、魅力的な役柄に創り上げていた。
音楽とダンスの狂乱から生まれる祭りのようなエネルギーは、観客をも巻き込みスウィングさせるに違いない。