PARCO劇場で1990年以来ロングランを続けている朗読劇の金字塔『ラヴ・レターズ』。2020年2月の新生PARCO劇場のこけら落とし公演で500回目の上演を行い、本年2月には2組のカップルにより上演される。
舞台にはテーブルと二脚の椅子だけ。並んで座った男と女が手にした台本を読み上げるだけの2時間。物語は、幼馴染のアンディーとメリッサが小学校二年生の時に始まる。最初の手紙はメリッサの誕生日会の招待状へのアンディーの返事だった。穏やかで内省的なアンディー。自由奔放で束縛を嫌うメリッサ。対照的な二人だが、折に触れ、手紙を交換し合い、交流を続けていく。別々の寄宿学校で過ごす思春期、大学を出てそれぞれの道を歩き始め、それぞれに結婚もする。その後再会した二人はあまりにも違う環境に身を置いていた。約50年にわたり綴られ続けた二人の往復書簡は、まさしくラヴレターである。
このやるせない静かな物語はじんわりと観る者の心深く染み入ってきて、89年にニューヨークで初演されるやいなや、全世界で上演され静かなブームを巻き起こし、PARCO劇場でも年齢も個性も異なったさまざまな500組以上のカップルがアンディーとメリッサの手紙を読み続け、PARCO劇場を語る時、欠かせない演目として人気を博している。演じてきたカップルの組み合わせにより、その都度新しい『ラヴ・レターズ』が上演されてきた。
今回の上演では2組のカップルが登場する。まずは、舞台だけでなく、本年は映画『大河への道』などの公開も控え、活動の場を広げている気鋭の若手俳優・溝口琢也と、2017年から19年に宝塚歌劇団花組トップ娘役を務め、退団後もミュージカルを中心に活躍中の仙名彩世のフレッシュな組み合わせ。
もう1組は、2011年に上演した組み合わせで、11年越しの再演となる岡本健一と奈良岡朋子のカップル。奈良岡の演技に感銘を受けた岡本が、劇団民藝で奈良岡と二人芝居を上演するなど、師弟関係のような絆で結ばれた2人である。11年前念願叶っての奈良岡との初共演で、舞台役者の神髄を知ったと言う岡本。出演に当たって、奈良岡から手ほどきを受けるほど心酔している。年齢で俳優を語るのは間違っているかもしれないが、それにしても40歳という歳の差カップルとは思えないほど、みずみずしい印象を得たのを思い出す。〝伝説〟とも言える公演の11年ぶりの再演に心が躍る。
また、初演以来、26年間にわたり、本作の翻訳・演出家として469回の『ラヴ・レターズ』を手がけた青井陽治の死後は、今の演劇界において最も注目される演出家の一人として数々の作品を手がけている藤田俊太郎が、本作に対する青井の強い思いをしっかりと受け止め、『ラヴ・レターズ』の新たなページを紡ぎ始めている。今回の公演の目撃者になれることは、演劇ファンとしての果報である。
『ラヴ・レターズ』
〔日程・出演者〕
2月3日(木)19:00開演 溝口琢也&仙名彩世
2月7日(月)15:00開演 岡本健一&奈良岡朋子
〔会場〕PARCO劇場(渋谷PARCO 8F)
〔料金(税込)〕7,500円
〔問〕パルコステージ03-3477-5858(時間短縮営業中) https://stage.parco.jp/