劇団EXILEのメンバー、青柳翔が弊誌「コモ・レ・バ?」に登場したのは、2013年発行の第15号だった。小田急線沿線の駅をめぐる企画<沿線グラフィティ>で、散歩人として相模大野の街を歩いてもらった。2009年の俳優デビュー舞台『あたっくNo.1』や、11年の主演ドラマ「ろくでなしBLUES」を観て、俳優としての魅力を感じ、弊誌に登場願ったわけだが、その後も主演映画『渾身 KON-SHIN』から、近年の舞台『ハムレット』、こまつ座『人間合格』、映画『孤狼の血 LEVEL2』、テレビドラマ「生きて、ふたたび 保護司・深谷善輔」など見続けている。その青柳翔がこのたび舞台『三十郎大活劇』で主演を務める。
青柳が演じるのは、戦前の激動の日本映画史の中で、一夜にして銀幕スターとなった若者・紅三十郎。役の衣装をまといチラシに写る青柳翔から、今までにない印象を得た。話題のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で描かれる、映画黄金期の時代劇スターのようなムードが感じられた。本作の初演は、1994年の『阿呆浪士』で、鈴木聡が旗揚げしたラッパ屋で上演された。パルコ・プロデュースでは20年に、今回と同じく鈴木聡脚本、ラサール石井演出により、赤穂浪士の世界を〝巨大な落語〟として喜劇的に描き、『阿呆浪士』のタイトルで上演され、エンタテインメント時代劇として劇場を大いにわかせた。このたびの公演では、鈴木聡&ラサール石井の相性抜群のタッグにより、装いも新たに紅三十郎を主人公とした物語『三十郎大活劇』が上演される。
第二次世界大戦に突入せんとする時代。日本映画もサイレントからトーキーへと、大きな改革の時代を迎えていたが、戦争の足音がしのびよる中、映画は政府の統治下に置かれ、表現の自由が奪われるような時代へとなりつつあり、日本映画は大きなうねりの中にあった。戦争の影が近づく中での映画と向き合う若者たちの葛藤が、コロナ禍にあって演劇は〝不要不急〟とされ、時代に振り回されて、好きなことが思うようにできない現在の社会と重なり合う。本作では、日本映画黄金期へのリスペクトを込め、激動の映画界を駆けまわる三十郎と仲間たちの切なく、そして熱いドラマが、鈴木聡の可笑しみと人情あふれる筆致で描かれる。映画と愛と平和を愛した若者たちを描いた青春物語である。
ラサールの「(青柳には)当時の銀幕スターの新しい人が出てきたときのような佇まいを演じてくれたら」という言葉に応えるためか、青柳は、黒澤明&三船敏郎コンビの『椿三十郎』や『用心棒』をはじめ、多くの時代劇を見直し、三船の台詞回しや殺陣の格好良さに大いに憧れたという。日本映画のすごさを海外にも知らしめたあの時代を生きた人々と、その世界をリスペクトしながら、鈴木&ラサールの創り出す喜劇の世界に生きたい、と作品への意欲を示していた。「舞台をやっていないと、俳優としての能力が低下していくような気がする。年に1、2回は舞台に立ちたい。筋トレ同様、毎日コツコツやる積み重ねの作業の楽しさと意義を舞台に感じている」と、舞台愛を語っている。
共演者には、AKB48の元メンバーで、本作がグループ卒業初の作品となる横山由依、俳優・声優として多岐にわたる活動で注目される入野自由、櫻坂46卒業後の初の舞台出演となる松平璃子、多くの映像、舞台作品で独自の存在感を見せてくれる近藤公園、さらに舞台、テレビドラマなどで、硬軟自在に役者としての色合いを変化させてみせる小倉久寛が若い出演者たちを支える。
青柳翔が昭和の活劇スターを、どのように演じてみせてくれるのか、そして、この作品からどんな笑いが生まれてくるのか、期待が高まる。
パルコ・プロデュース『三十郎大活劇』
脚本:鈴木聡 演出:ラサール石井
出演:青柳翔/横山由依/入野自由 松平璃子 近藤公園 小倉久寛 ほか
東京公演
〔日程〕4月2日(土)~4月17日(日)
〔会場〕新国立劇場 中劇場
〔料金(税込)〕S席9,800円 A席5,800円 U-25チケット4,000円(観劇時25歳以下対象、要身分証明書(コピー・画像不可、原本のみ有効)、当日指定券引換/「パルステ!」、チケットぴあにて前売販売のみの取扱い)※未就学児入場不可
〔問〕パルコステージ03-3477-5858(時間短縮営業中)
https://stage.parco.jp
大阪公演
〔日程〕4月23日(土)・4月24日(日)
〔会場〕COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
〔料金(税込)〕9,800円※未就学児入場不可
〔問〕キョードーインフォメーション0570-200-888(11:00~16:00※日曜・祝日は休業)