日本テレビ系列で10月から始まった小池栄子主演の連続テレビドラマ「コタツのない家」の主題歌が、なんとも小気味いい。石川さゆりが歌う「ダメ男数え唄」である。ああ言えばこう返す、セリフの応酬のテンポが良く、身勝手な父親、夫、息子に手を焼き、恨み言をいいながらも、見捨てることができず、私にまかせておきなと面倒を見てしまう周りから甘えられる主人公の心情が、リズミカルに綴られている。ドラマの脚本を手がけている金子茂樹作詞で、作曲&編曲は気鋭のミュージシャンであり音楽プロデューサーの阿久津健太郎。ノリのいいテンポとメロディが、チャレンジ精神旺盛な石川さゆりのスピリットにピッタリとはまっている。
石川さゆりの歌手デビューは、1973年日本コロムビアからリリースされた「かくれんぼ」で、アイドル歌手としてのデビューだった。同期には森昌子、桜田淳子、山口百恵の「花の中三トリオ」がいる。そういえば、桜田淳子のトレードマークとして知られる〝エンジェルハット〟と呼ばれたキャスケットを石川さゆりも被っていたような記憶がある。デビュー時には、同じホリプロ所属の森昌子、山口百恵とのユニット「ホリプロ三人娘」が企画されたが短期間で頓挫した。石川さゆりが歌手としてスポット・ライトを浴びるのは、77年1月の15枚目のシングルである「津軽海峡・冬景色」のリリースまで、待たねばならなかった。この曲は76年に発売されたアルバム『365日恋もよう』からシングル・カットされたもので、現在の演歌歌手としての石川さゆりの礎となった曲と言えよう。石川さゆりの第2ステージがここから始まったわけである。
オリコンシングルチャート最高位6位、年末の日本レコード大賞では歌唱賞を受賞している。ちなみにこの年のレコード大賞が沢田研二の「勝手にしやがれ」で、「津軽海峡・冬景色」は次点だった。フジテレビ系列のFNS歌謡祭では、グランプリ、最優秀歌唱賞、最優秀視聴者賞も獲得している。まさに大ブレイク、アイドルから本格的演歌歌手へと変貌した曲との出合いだった。また、作曲を手がけた三木たかしは、岩崎宏美の「思秋期」と合わせて、レコード大賞作曲賞に輝いている。