ファーストアルバム『水色の恋/涙から明日へ』はオリコンチャート最高位1位を獲得し、72年度オリコン年間アルバムチャートでも1位となった。セカンドアルバム、4枚目、5枚目のアルバムも1位を獲得している。アルバムには、自身のオリジナル曲に加えて、さまざまなカバー曲も収録されている。北山修作詞、加藤和彦作曲の「あの素晴らしい愛をもう一度」、メリー・ホプキンの「悲しき天使」、トワ・エ・モアの「虹と雪のバラード」、シモンズの「恋人もいないのに」、ビリー・バンバンの「さよならをするために」、森山良子の「この広い野原いっぱい」、伊東きよ子が歌ってヒットした「花と小父さん」、ザ・タイガースの「花の首飾り」、越路吹雪やトワ・エ・モアが歌った「誰もいない海」、フォー・クローバースの「冬物語」、GARO(ガロ)の「学生街の喫茶店」、チェリッシュの「なのにあなたは京都へ行くの」「ひまわりの小径」、吉田拓郎の「ある雨の日の情景」、早川義夫が作曲し3人組女性フォークグループもとまろが歌いヒットした「サルビアの花」、小坂明子の「あなた」などなど選曲からは、天地真理の音楽的センスが見えてくる。
いままで、天地真理を音楽性という視点から見たことがなかったが、こうしてアルバム収録曲を並べてみると、そこから、天地真理は本当はこんな曲を歌いたかったのではないかと思えてくるのである。そこに「想い出のセレナーデ」が重なる。天地真理の代表曲とされる「恋する夏の日」の弾んだ曲調より、6枚目のシングル「若葉のささやき」や「想い出のセレナーデ」のような秋色の景色のようなどこかしっとりとした情感が香り立つようなメロディラインを好んでいたのではないだろうか、と想像をたくましくさせるのである。NHK紅白歌合戦には72年に初出場し、3年連続出場している。「ひとりじゃないの」(紅組トップバッター)、「恋する夏の日」、「想い出のセレナーデ」を披露している。ちなみに82年には、ドラマ〝赤いシリーズ〟の一篇「赤い魂」のヒロイン役で知られる浜田朱里が「想い出のセレナーデ」をカバー曲としてリリースしている。
天地真理は現在も活動を続けており、2023年10月には、池袋HUMAXシネマズ・シネマ1にて、「真理ちゃん映画祭り2」の上映&舞台挨拶&トークショーが開催された。ジュリー(沢田研二)、ショーケン(萩原健一)と共演した主演映画『虹をわたって』と森田健作共演の主演映画『愛ってなんだろ』の上映、テレビの〝真理ちゃんシリーズ〟からお宝映像ともいえる14曲の歌唱シーンの上映、森田健作を迎えてのトークショー、とファンにとってはたまらないイベントだっただろう。
また、本年4月から約2年かけて、47全都道府県各県庁所在地のライブハウスなどで開催される「2024年スクリーンコンサート上映会」も発表された。すでに「真理ちゃんとデイト」スクリーンコンサートも東京・銀座のTCC試写室で実施されており、今後、2月25日、3月10日、3月31日にも開催される。2月25日と3月31日には舞台挨拶が予定されている。
デビューから半世紀を超えた今、歌手・天地真理には、本当に好きな彼女らしい昭和の曲を歌い続けて欲しいと願うばかりだ。
文=渋村 徹 イラスト=山﨑杉夫