
歌謡曲にジャズや、ハワイアン、ラテンなどの要素を取り入れ、戦後日本で独自に発展していった音楽スタイルのひとつに「ムード歌謡」というジャンルがある。歌の内容は、ナイトクラブや酒場などネオン街を舞台にした大人の男女の恋愛模様を描いた歌が多い。そして、ムード歌謡コーラスグループの先駆けとなったのが、ハワイアンを歌謡曲に取り入れ1950年代に結成された和田弘とマヒナスターズだろう。
60年には松尾和子を迎えて、第2回日本レコード大賞を受賞した「誰よりも君を愛す」をはじめ、「北上夜曲」、「寒い朝」、「お座敷小唄」、「愛して愛して愛しちゃったのよ」などのヒット曲で知られる。「愛して愛して愛しちゃったのよ」での田代美代子や、「寒い朝」での吉永小百合もそうだが、女性歌手を迎えるスタイルをとることが多かった。
60年代に入ると、次々とムード歌謡コーラスグループが登場してくる。黒沢明とロス・プリモスは、ラテンコーラスグループとして61年に結成されているが、65年にメインボーカルに森聖二を迎え、日本クラウンから「涙とともに/ラブユー東京」でデビューしたのは66年だった。2010年からは、ロス・プリモス名義で稼働している。

黒沢明とロス・プリモスに続き、「よせばいいのに」「お嫁にゆけないわたし」の三浦弘とハニーシックス、「小樽のひとよ」「君は心の妻だから」の鶴岡雅義と東京ロマンチカ、「長崎は今日も雨だった」「噂の女」の内山田洋とクール・ファイブ、「わたし祈ってます」「星降る街角」の敏いとうとハッピー&ブルー、「コモエスタ赤坂」「別れても好きな人」のロス・インディオスなど、ムード歌謡コーラスグループが、昭和の歌謡史をにぎわせた時代があった。









