私には個人的に棟方志功と繋がる小さなエピソードが一つある。1969年、大学を出た年に寺山修司が『季刊 地下演劇』という雑誌を創刊する。その編集デザインを任された。編集工程の中で、美術評論家のヨシダヨシエさんが、女性のヌード写真を持ってきた。「使えませんかね」と言う。モデルは舞踏家の辻村和子さん、「いやね、棟方さんは目が悪いから、モデルを使って作品を彫れないんですよ。それでこの写真を撮りました」。2、30枚はあっただろうか。その半分ほどを『季刊 地下演劇』の表紙に貼り込んだ。この頃棟方は大作を次々と製作しているので、そのいずれかの資料になったのだろう。これが唯一の、私が持っている棟方との思い出である。
(参考:『生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ』)
1947年東京生まれ。クリエイティブ・ディレクター、プロデューサー。株式会社アタマトテ・インターナショナル代表。京都芸術大学客員教授。大正大学表現学部長 教授。1968年より「天井棧敷」にかかわる。1974年、月刊『ビックリハウス』を萩原朔美と創刊。以降、編集、出版、文化イベント、TV番組制作等の仕事を展開。2022年、澁澤龍彦の遺作『高丘親王航海記』から着想を得たカリグラフィーと大規模な絵画作品などが、世田谷美術館に収蔵された。