筒美京平は作曲家でありアレンジャー、そしてサウンドプロデユーサーだった。
ホーンセクションやストリングス、ドラムやベースがもたらすリズム感がメロデイーと一体になって生まれる「心地よさ」や「カッコ良さ」。朝丘雪路が歌った70年の「雨がやんだら」や71年の平山三紀の「真夏の出来事」はそんな曲たちだった。

当時と今との音楽を取り巻く環境は天と地ほどの違いがある。
筒美京平がレコード会社の洋楽デイレクターだったことはもはや知らない人はいないだろう。それだけではない。僕らが高校生の頃に聞いていたガス・バッカスの「恋はスバヤク」や坂本九が歌っていた「涙くんさよなら」をアメリカの人気歌手、ジョニー・ティロットソンに歌わせた時のデイレクターが彼だったことを知るのは遥かに後のことだ。
音楽雑誌と呼ばれるのはクラシックにジャズや洋楽ロック。テレビから流れるのは歌謡曲ばかりでGSも芸能誌でしか扱われない。「歌手」に話題性はあっても「作曲家」を語る媒体など存在しない。それが70年代初めの状況だった。













