23.11.09 update

〝ルリ子ブーム〟が巻き起こった1969年、「愛するって耐えることなの」も流行語になった大ヒット曲 浅丘ルリ子「愛の化石」

 1968年から70年頃、芸能界では浅丘ルリ子旋風が巻き起こっていた。その時期の浅丘ルリ子の映画出演作といえば、68年には、石原裕次郎と小林旭の数少ない、そして2人の最後の共演作であり、加えて高橋英樹も出演していた『遊侠三国志 鉄火の花道』、裕次郎はじめ、英樹、和泉雅子、浜田光夫ら日活スターに加え、東宝から浜美枝を迎え、さらに、中村嘉葎雄、岡田英次、佐藤慶、島田正吾、辰巳柳太郎ら豪華俳優たちの共演も話題になった娯楽大作『昭和のいのち』、加山雄三が若大将とはまったくタイプの違うハードボイルドなスナイパーを演じルリ子との初共演もメディアを賑わわせた『狙撃』に出演。
 69年には、旭、英樹、渡哲也、宍戸錠ら日活の人気スターが揃った『地獄の破門状』、大映の増村保造監督の指名による初手合わせが話題になった『女体』、浦山桐郎監督作『私が棄てた女』、五社英雄監督がメガホンをとり、仲代達矢、中村錦之助(後に萬屋錦之介)、丹波哲郎、司葉子らスター俳優共演が実現した大作時代劇『御用金』、裕次郎がサファリラリーに挑戦するレーサーを演じ、フランスの俳優たちとも共演した『栄光への5000キロ』。そしてルリ子が最新のモードを着こなす『華やかな女豹』では、70年の邦画五社の正月映画で唯一の女性主演を務めている。

 68年には、テレビドラマにも意欲的に出演し、NHK大河ドラマ「竜馬がゆく」では北大路欣也扮する坂本竜馬の妻・おりょうを演じ、演出の和田勉から絶賛されたのをはじめ、山口崇、関口宏らと共演した「流れる雲」、高橋悦史、細川俊之、竹脇無我、高峰三枝子、山形勲ら共演の「水色の季節」と、立て続けに連続ドラマに主演している。この2作では、主題歌も歌っている。そして、後にテレビ大賞に発展する第1回1968年週刊TVガイド賞の主演女優賞に輝いた。ちなみに主演男優賞は「ザ・ガードマン」の宇津井健で、2人で「週刊TVガイド」の表紙も飾っている。助演女優賞は長山藍子、助演男優賞は山口崇という京塚昌子主演の「肝っ玉かあさん」で共演していた2人だった。
 さらには、68年度ゴールデン・アロー賞の大賞にも輝き、69年にはゴールデン・アロー賞グラフ賞と2年連続の受賞となった。そんな〝ルリ子ブーム〟のさなか、リリースされたのが「愛の化石」だった。それまでにも、主演映画『丘は花ざかり』の主題歌や、裕次郎とのデュエットによる「夕陽の丘」なども、リリースしているが、「愛の化石」は、それまでの楽曲とはかなり毛色が違っていた。なにしろ、曲のほとんどが語りで綴られており、語りの合間に歌が入るという構成だったのだ。にも拘わらず、70万枚を超える大ヒット曲となり、オリコン・シングルチャートでも最高位2位のセールスを記録している。ルリ子の「愛するって耐えることなの」という語りは流行語のように多くの人々に使われていた。

 当時、僕は中学3年だったが、レコードを買ってしまった。学年誌と呼ばれる学習雑誌があって、旺文社からは「中〇時代」、学研からは「中〇コース」というものが出版されていた。その「中三コース」の中での、「中学生にとっての有名人は誰?」といったアンケート調査で、政治家、文化人、学者、作家、ミュージシャン、スポーツ選手、俳優たちの中から、1位に輝いたのが、当時読売巨人軍の王貞治と、浅丘ルリ子だった。〝ルリ子ブーム〟は中学生にも浸透していたのだ。
 その他の曲も聴きたくなって、その後にリリースされたアルバム『浅丘ルリ子のすべて 心の裏窓』までも買ってしまった。このアルバムの装丁は横尾忠則だった。当時、テレビ各局で連日のように放送されていた、ランキング形式の歌謡番組にも、毎週のように出演し、華麗なファッションを披露していた。69年に、日本テレビ系列で放送されていた「サンデーナイトショー」というトーク&音楽バラエティ番組があった。永六輔と岸田今日子が司会を務める、かつての「夢であいましょう」を連想させる大人好みのバラエティ番組で、長嶋茂雄や、石原慎太郎&裕次郎兄弟、渥美清らがトークのゲストに出演していた。その番組の中で「浅丘ルリ子の部屋」というコーナーがあり、毎回、竹脇無我、北村和夫ら俳優をゲストに迎え、ルリ子が〝女の口説き〟を演じるというもので、ファッションも話題になっていた。

1 2

映画は死なず

新着記事

  • 2024.11.21
    「星影のワルツ」「北国の春」という2つの大ヒット曲...

    千昌夫「夕焼け雲」

  • 2024.11.20
    能登の子どもたちや被災者を、美しい音楽で励ましてく...

    被災者に勇気を与えるウイーン・フィルの活動

  • 2024.11.20
    指揮・坂本龍一✕東京フィルハーモニー交響楽団による...

    坂本龍一の伝説のコンサートを映画館で!

  • 2024.11.19
    ベートーヴェン「第九」初演から200周年の記念すべ...

    12月31日特別先行上映、1月3日から1週間限定公開!

  • 2024.11.19
    敷寝具から枕まで世界最大級の熟睡ブランド、〈マニフ...

    特別モデル【エコ サンドロ】限定3000台の予約開始!

  • 2024.11.18
    公募展の発祥地〈東京都美術館〉のテーマは「ノスタル...

    芸術活動を活性化させ、鑑賞の体験を深める

  • 2024.11.18
    女優「高峰秀子」と妻「松山秀子」─日本映画史に燦然...

    高峰秀子という生き方

  • 2024.11.15
    本格イタリアンをご家庭で、日清製粉ウェルナの「青の...

    応募〆切: 12月20日(金)

  • 2024.11.15
    京都のグンゼ博物苑で、昭和の激動時代の魅力を伝える...

    グンゼの創業の地で、「昭和レトロ展」

  • 2024.11.14
    「嵐」と並ぶシングル58曲連続トップテン入りを果た...

    THE ARFEE「メリーアン」

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!