—老体からは逃げられない。でも笑い飛ばすことは出来る—
萩原 朔美さんは1946年生まれ、11月14日で紛れもなく77歳を迎えた。喜寿、なのである。本誌「スマホ散歩」でお馴染みだが、歴としたアーチストであり、映像作家であり、演出家であり、学校の先生もやり、前橋文学館の館長であり、時として俳優にもなるエッセイストなのである。多能にして多才のサクミさんの喜寿からの日常をご報告いただく、連載エッセイ。同輩たちよ、ぼーッとしちゃいられません!
連載 第24回 キジュからの現場報告
身体が何を話しかけてきているのか。そのメッセージを聞こうとするのだけれど、なかなか雑音が大きくて、聞きとれない。多分それは、今まで、頭で考えたメッセージをもとにして、自分の行動を決定してきたからだ。身体は、ずっと頭に従ってきたので、それが常態化してしまったのだろう。
多分、70代は身体が発する情報に耳を傾ける時の始まりかも知れない。
実は、先月から、詩を書き始めた。私が絶対やらないと決めていた事の筆頭だ。何しろ詩人の孫と言われ続けてきたから、反発心から詩には近づかないようにしていたのだ。
きっかけは、前橋の詩人が声を掛けてくれたので、彼の詩誌に書き下ろした。ちょうど、何か今までやらなかったことにチャレンジしたくなった時だった。身体の衰えが凝り固まった頭をほぐしてくれたのだ。身体のメッセージは、もっと自由に動けと、日々私に訴えているのである。ニーチェの「肉体の理性」と言う言葉が浮かんできた。肉体は、「我を唱えず、我を行う」のだそうだ。
第23回 老いは戯れるもの
第22回 引きこもりの愉しみ
第21回 楽しい会議は老化を防ぐ
第20回 記録はアートになりたがる
第19回 老いが追いかけてくる
第18回 気がつけばおばんさん気分
第17回 新しい朝が来た、希望の朝だ♪
第16回 年齢とは一筋の暗闇の道
第15回 今こそ<肉体の理性>よ!
第14回 背中トントンが懐かしい
第13回 自分の街、がなくなった
第12回 渡り鳥のように、4箇所をぐるぐる
第11回 77年余、最大の激痛に耐えながら
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長、金沢美術工芸大学客員教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。