凛として情感ある
女優の声に
魅せられた時間
第7号は、佐久間良子さんと、作詞家で作家のなかにし礼さん。なかにしさんは、立教大学の学生時代に、映画『五番町夕霧楼』『人生劇場・飛車角』を観て、女優・佐久間良子のファンになった。下宿の壁には『五番町夕霧楼』のポスターを貼り、眺めていたことを告白してくださった。佐久間さんとなかにしさんとの初仕事は2000年の大晦日に上演されたなかにしさん作・演出・総監督の世界劇『源氏物語』で、佐久間さんは藤壺を演じた。ファンである佐久間さんと一緒に仕事をするなんて「若き日には夢にも思わなかった」と言う。現在では「なんとはなしに気持の通じる間柄」で、一緒に多くの仕事をしているお2人。アルバム『なかにし礼と13人の女優たち』では佐久間さんは歌を披露している。それぞれの分野で濃密な時間を過ごしていらしたお2人の会話をすぐ傍で聴くことができたのは、なんとも贅沢で貴重な体験だった。
発行日にかかった
女優からの
感激の電話
第8号に登場していただくことになった岩下志麻さんがお相手にとリクエストしたのは写真家の下村一喜さん。下村さんは「女優を撮ることがライフワーク」という言葉に違わず、銀幕の大女優から気鋭の若手女優まで、多くの女優たちから信頼され指名されることが多い。浜崎あゆみをはじめとするミュージシャンのプロモーションビデオなどの音楽映像の監督としても知られている。岩下さんも下村さんの仕事には絶大な信頼を寄せ、2019年に上梓された『岩下志麻女優生活60周年記念フォトブック 美の奴隷として生きることに決めた』はお2人の共著である。下村さんは岩下さんを〝姫〟と呼び、愛し、大尊敬し、「命がけで僕たちにいつも夢を見させてくださっている」女優を、やはり命がけで撮影する。岩下さん主演の数々の映画話の輪に私も交えていただいた後、「こんなに私の作品を観ていただいて。私のカメラで写真撮りましょうよ」と撮っていただき後日送られてきた、岩下さんとの2ショット写真は、部屋に貼りたいが日焼けするといけないので、宝物として大切にしまっており、時折取り出してはニンマリとほくそえんでいる。また、雑誌発行日には、ご本人の携帯から「私のわがままな要望に最後までつきあってくださって、ありがとう」との電話があり、その心遣いに感動した。