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『「桐島です」』に続いて『安楽死特区』で主役を演じる俳優・毎熊克哉。一瞬をスクリーンに焼き付けるという映画に魅せられる

 今回の映画には、それぞれの登場人物に見せ場があり、観客をスクリーンに引き込むベテラン俳優たちが共演者に名を連ねている。特区の医師役の奥田瑛二、加藤雅也、板谷由夏。安楽死を願い特区に入居する患者とその家族の事情もそれぞれである。「苦しい状態で生きるのは生殺しだ、人として今のうちに終わりたい」と安楽死を望む患者役に平田満、その妻役には筒井真理子。幼児を病気で亡くし「息子が生きていた5年間を自分が生きている間はずっと憶えていてあげなくてはいけないの」と認知症が進む自分を責め安楽死を願う母親役を余貴美子が演じ、患者とその家族、彼らに接する医師など周囲の人々の思いにも焦点が当てられ、毎熊克哉、大西礼芳の主役二人の芝居にもニュアンスをもたらす。



「本当に難しい役だなとか、難しい題材だなとか思いながら……現場はすごいんですよ。役者陣もさることながらレジェンド級のスタッフ陣が伴明監督の許に集まっている。脚本の丸山昇一さんもそうです。ぼくがこの現場で感じたのは、生きるということのありがたみ。しんどくてしゃべることもできないという状態でずっといると、声も小さくなっていくんです。実際に弱くなっていくようで、身体もちょっと調子悪いなというように感じながらも、ふと周りを見渡して、ものすごい人たちと映画を創れているという喜びを感じていました。緊張感もすごくあるんですよ。全員がご自分の仕事をそれぞれピシッとやっていらして、本番で何かミスるようなこともほとんどありませんでした。
 医師と対峙するシーンでも客観的に考えたら奥田瑛二さん、加藤雅也さん、板谷由夏さんの3人を前に自分がこんなにいっぱいセリフをしゃべるなんて、ああ緊張するなと思いながらも、それも実は嬉しいことでもあるわけじゃないですか。本当にすごい人たちがいっぱい集まって生まれる現場の空気感。ゆるい姿勢で挑む者はもちろん一人もいないし、小手先は通用しない。
 究極の題材である生死をまっすぐにとらえ、各々が自分の精一杯のものをぶつけていく、それをちゃんと撮ってもらえるような緊張感がすごくあって、それは、何年経っても心に刻まれる記憶になると思います」



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