ここで、1975年公開の映画『県警対組織暴力』が製作された経緯についても触れておこう。『山口組三代目』というシリーズが2本作られたときに、山口組に東映から資金が流れていると思われていて、警察の手入れが入り、東映社長以下関係者が警察に事情聴取されるということがあった。その折に、岡田茂という人はヤンチャというのか、ピンチをチャンスに変える才に長けていたというのか、警察に事情聴取に行ったときにマスコミを集めて、『ゴッドファーザー』を引き合いに「アメリカではヤクザを描いたらアカデミー賞、日本では事情聴取だ」と言い、大いに話題となった。そこで製作されたのが『県警対組織暴力』だった。最終的には警視庁と手打ちとなった。そして、正月映画に予定されていた〝山口組〟シリーズ3作目の製作をやめ、その代わりに同じ高倉健主演の実録ではない『日本任俠道 激突篇』が作られた。
私は、それまで現場一筋でやってきたが、東京本社で秘書部長、総務部長、監査部長という、気がつけば管理部門の仕事をするようになっていた。そして、いつの間にか社長になっていた。社長を務め何事もなく退任できればそれに越したことはない。平穏無事に務めあげることができれば一番いいなとは思うが、いろいろと考えなければいけないことは出てくる。社長としての考えについては次回続篇にて、今少し話をさせていただくことにする。