65年にはNHK紅白歌合戦に初出場を果たしたジャニーズ。歌ったのはブレヒトの戯曲で、クルト・ヴァイルが作曲を手がけた音楽劇『三文オペラ』の劇中歌でスタンダード・ナンバー「マック・ザ・ナイフ」のカバーだった。初出場を祝ってハワイにいた石原裕次郎から〝紅組をぶっとばせ〟といった内容の祝電が届き、披露された。このエピソードもまた、当時の映像と共に『ジャニーズ伝説』の舞台で紹介されている。66年の映画『青春大統領』で4人は裕次郎と共演した。都はるみ、水前寺清子もこの年紅白初出場を果たしている。
ジャニーズの4人は、本格的なダンスレッスンのため66年に渡米した。LPレコードのレコーディングも開始したが、何らかの事情でLPのリリースは実現することなく、翌年帰国した。そして67年12月31日、ジャニーズは解散した。
解散と同時に、中谷良はジャニーズ事務所を退所している。飯野おさみはアメリカでのダンス修業を経て72年に劇団四季に入団し、ミュージカル俳優として『キャッツ』『ウエストサイド物語』(初代リフ役)、『コーラスライン』『ジーザス・クライスト=スーパースター』など数多くの作品に出演している。
あおい輝彦は、68年にテレビドラマ木下恵介アワー「おやじ太鼓」に出演以来、「3人家族」「あしたからの恋」「二人の世界」など連続して木下恵介アワーに出演。木下恵介・人間の歌シリーズ第1作「冬の旅」にも主演し、ドラマはテレビ大賞を受賞している。また、TBS系で放送されていた人気時代劇「水戸黄門」で、88年から12年間にわたって〝助さん〟を演じており、憶えている人も多いだろう。映画でも『犬神家の一族』(犬神佐清役)をはじめ『続・人間革命』『病院坂の首縊りの家』『真田幸村の謀略』『二百三高地』『大日本帝国』など多くの大作に出演している。
歌手としても71年のドラマ主題歌「二人の世界」がオリコン週間チャート最高3位のヒット、76年の「あなただけを」はオリコン週間チャート6週連続1位、年間チャートでも第7位に入る大ヒットとなり、紅白にソロとしても出場した。そのほかにも「Hi-Hi-Hi」「センチメンタルカーニバル」、荒木一郎作詞・作曲の「ジャニスを聴きながら」などのヒット曲を出した。また、アニメ『あしたのジョー』の矢吹丈役の声でも人気を得た。
ジャニーズが解散して、フォーリーブスが登場。その後もたのきんトリオ、シブがき隊、少年隊、光GENJI、SMAP、TOKIO、V6、Kinki Kids、タッキー&翼、嵐、King & Prince、SixTONES、Snow Manなどなど、多くのアイドルがジャニーズ事務所から誕生した。その原点がジャニーズだった。真家ひろみ、飯野おさみ、中谷良、あおい輝彦。すべてはこの4人から始まった。そして、僕の脳裏には4人のダンスシーンと共に「太陽のあいつ」のメロディが流れてくるのだ。
文=渋村徹 イラスト=山﨑杉夫